Suzu Masa ブログ

辛酸なめた男が美容室「経営」をリアル・ガチで語る

大規模店5つの緊急生き残り策

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 遅い、ショボい、ポーズだけの経済政策

これで日本政府の方針がはっきりしましたね。

一言で言えば、潰れるものはつぶれてしまえ、そんなところに財源を充てる余裕はないと。なぜなら緊縮財政だから。プライマリーバランス基礎的財政収支)が大事だからと。

 

論より証拠。

「遅い、ショボい、ポーズだけ」の政策は、緊急支援とは名ばかりの、実態は中小企業への借金漬け。その借金漬けにしても、融資相談から着金までは2~3カ月はかかるという遅さ。

 

全国民への一律10万円の給付は、当初30万円から迷走した挙句、やっと決定。それでも一部を除いて現在まで振り込まれていません。手続きのお知らせさえ各家庭に発送されていないのがほとんどで、着金を早くするとの名目でオンライン申請の制度を設けましたが、手続きは面倒くさくてハードルが高く、おまけに設計の不具合で郵送による申請を各自治体は呼びかける始末です。

 

ハードルが高いのは雇用調整助成金が顕著で、多くの批判を浴びて制度を簡便化したり支給額を1日当たり8330円から1万5000円程度に引き上げようとする動きもあり、その都度現場は大混乱。こちらも迷走を続けています。

 

めずらしく持続化給付金はその手続きの簡便さが話題になっていますが、予算が2.3兆円とショボい金額です。すでに申請開始から1週間で50万件が申請済みのようで、もはや予算の3分の1を消化。すぐに予算が足りなくなるのは見えています。またいつものように補正予算を組み閣議決定してと悠長なことを言っていて、必要なところに必要なタイミングで支給することができず、ずるずると実行が遅れてしまいます。

 

しかしその給付額からみて、恩恵をこうむるのは小規模サロンのみで、大規模サロンにはスズメの涙ほどの金額でしかありません。

 

また、各自治体で感染拡大協力金の名目で、休業した事業所には協力金が支給されますが、これも大規模店には意味をなさず、また不正受給であった場合は、支給した金額に加えて違約金がその同額徴収されるという厳しいものです。

さらに雇用調整助成金や持続化給付金は、不正受給が見つかれば、受給額の満額を返さなければならず、さらに違約金として受給額の20%以上が違約金として徴収されます。

 

事業者への家賃補助も遅ればせながら決まりそうですが、家賃の3分の2を向こう6カ月分補助。ただし、今回の緊急融資を受けた事業所に限るという、訳の分からない条件が付与されそうな雲行きです。上限金額は50万円ということですから、大規模店への恩恵はほとんどありません。

 

しかし、これらはすべて課税対象となるというオチがつきます。(戦後最大の国難という緊急時における特別な救済策に課税するとはけしからんという声が上がって、修正されるかもしれませんがね)

 

こんな「遅い、ショボい、ポーズだけ」の政府の政策に待ってはいられません。業界人同士で大規模店を中心に政府に意見書を提出するという動きがあるようですが、フレキシブルに政府が対応してくれるとはとても思えません。このままでは多くの大型店はつぶれてしまいます。

 

政策からこぼれた大規模店

 

以上見てきたように、一番被害をこうむっているのは大規模店です。政府が打ち出す各種、後手後手の支援策は、大規模店を素通りして小規模店向けになっていることがはっきりしました。

私のところにも、ここのところ大規模店からの相談が多く、経営者の悲鳴を聞いています。

 

ですから今回は大規模店向けに、生き残りのための緊急の対策を考えてみました。ただし、休業していても、営業していてもかまいません。とにかくさまざまな方法(内部留保でも融資でも保険の解約や保険会社からの融資、リスケなど)でかき集めたキャッシュが3カ月持つという前提で話をします。

この3カ月の短期間にできる対策です。

 

5つの緊急生き残り策

【対策その1】既存客との関係強化に充てる

ビジネスを成り立たせている原点は「顧客」です。言うまでもありませんね。顧客とは、「顧(かえり)みる」+「客」と書きます。つまりリピート客であるという意味合いです。単なる1回限りの新規客は顧客とは言いません。

 

ここで集客へのパラダイムシフトが起こります。今までは経営者の関心は新規集客に注力が置かれていました。そのために大手集客サイトに高い掲載料を払って集客を依存してきました。

 

しかし、こういう事態になってみると、既存客=顧客の重要性に気づかされます。理美容業はリピータービジネスであるというビジネスの原点に立ち帰るべきなのですね。

 

私が再三提唱した既存客への手書きによる手紙作戦。従ってくれた人が多くいたようで、お店の思いが伝わり、お客様から感動や感謝の言葉が返ってきているとの報告を受けています。

こういうときこそ既存客との関係強化、絆づくりの絶好の機会なのですね。

 

【対策その2】何で“とんがる”のかを改めて考えてアピールする

数ある競合店の中で、「あなたの店が選ばれる理由」はなんなのか、これを見つけだす必要があります。選ばれる理由を知りたければ、上位20~30%のお客様に聞くことです。それらを集約した意見を、たとえば「接客」「技術」「メニュー」「料金」「立地」などのカテゴリーごとに分類し、そのなかから「理由」となる意見を探すことです。

 

まぁ、そこから選ばれる理由を探し“とんがる”コピーを考えます。“とんがる”コピーを考えたら、それを全面的に押し出し、自社のホームページで謳います。

 

次に、“とんがる”コピーを掲げたツールを利用して新規集客を仕掛けます。エリアを限定した、いわばエリアマーケティングを仕掛けるのです。

その場合、エリア選定が重要となりますが、これも上位のお客様がどの地域から来ているのかがヒントとなります。集合住宅が多ければ、その集合住宅に集中してポスティングを仕掛けます。なぜなら、その集合住宅こそ、上位客となる率が高い予備軍が住んでいる可能性を期待できるからです。

 

大手集約サイトに頼るよりも、ずっと効率よく、確実性も高くリーチできるのです。そして、一度集客が実現できれば、リピーターになる確率は飛躍的に高まります。言うまでもないことですね。

 

【対策その3】雇用契約を破棄して「業務委託契約」を結ぶ

これだけは言いたくありませんでした。でも、事業存続のためには背に腹は代えられません。

今回のコロナ禍で最も打撃を受けたのが大型サロンです。人件費、家賃、一定期間契約の広告宣伝費といった固定費の高さが致命的です。なかでも「人件費」。

 

臨時休業していても、時短営業していても、人件費は発生します。この場合、頼りになるはずの雇用調整助成金ですが、現在の制度設計では使いにくく、また設計そのものの見直しをやっている最中で、最終的にどのような形になるのかわかりません。現状、アテにできないというのが正直なところです。

 

ならば、経営者は早く動く。全社員とは言いません、一部の社員でも結構です、雇用契約を解消して業務委託契約を結ぶことです。今回の持続化給付金は個人事業者にも適用され、満額で100万円が支給されるという内容です。休業中の補償に100万円は、個人事業主にとっては朗報でしょう。今から申請しても、前年度の確定申告がされていないので、条件は満たしていないのでムリですが、ならばこういう“奥の手”があります。

 

どこかのタクシー会社が使った手ですが、会社都合の解雇をすること。そうすれば7日間の据置期間を過ぎれば失業保険金を受給できます。そうやって失業期間をしのいで、頃合いを見て業務委託契約を結べばいいのです。

業務委託契約をするのがポイントで、上記のタクシー会社のように正社員契約を結び直せば、不正受給や詐欺罪の適用が懸念されます。

 

【対策その4】売上よりも利益重視

店舗の多さは意味を持ちません。むしろマイナスに作用します。これが今回のコロナ禍で明らかになったことで、経営者のマインドセットが望まれるところです。

 

コロナ以前から採算の思わしくない店舗であったところは真っ先にスクラップすることです。それに続く利益計上の不安定な店はスクラップするか面積を縮小する。(もちろんスクラップするにも経費がかかりますから必要資金はプールしておくことは言うまでもありません。一方、借入金過多の場合はこの方法は使えません。採算割れしている店舗でも実態は返済の原資となっているからで、この場合はリスケや採算店への資源投入でしのぐしかありません)

 

そうやって店舗数や規模を縮小していけば当然ですが売上は減少します。しかし、利益率は高くなります。

ただし、そう額面通りにはいきません。なぜならコロナ感染は終息したわけではありませんから、防疫体制をとりながら営業をしていくとなると、三密を避けるためにセット椅子の間隔を開けたり、そのための来店調整をしたりする必要があり、コロナ以前の業績を上げることは物理的に不可能になるからです。おそらくこういった防疫体制は、ワクチンなどの抗ウイルス薬が開発されるまでの1、2年はかかるでしょう。

 

すると売上は半減するという覚悟が必要です。半減してもなお店舗を存続させるためには、単価を上げる、スタッフ数を減らすといった対策が急務です。つまり人時生産性を上げることです。

 

高度なマネジメント力が必要です。1店舗、1店舗、採算のシミュレーションをして早急な決断が必要となります。

 

【対策その5】新たな事業の創出へ

こちらは一転して大規模店であるからこその優位性が働きます。なぜなら顧客情報が何十万件と収集しストックされているからです。

繰り返しになりますが、あえて何度も言います。理美容室にとって最大の資産は、決算書に明記されていない「顧客情報」という隠れた資産です。

 

この最大の資産を眠らせたままにしておくのは、なんとももったいないのです。しかも「美やおしゃれに対する消費意欲が旺盛な女性」というプレミアムの価値が付きます。それらの顧客情報を喉から手が出るほど欲しがる異業種はたくさん存在します。

 

それらの異業種とアライアンスするのです。アライアンスとは、互いのビジネス上の優位性となるものを持ち寄って、双方で活かし合うということです。サロンの場合の優位性とは、言うまでもなく顧客情報です。(ただし個人情報保護法という法律があります。アライアンス相手の企業に顧客情報を流出させてはいけませんので要注意!)

 

新たな資金の持ち出しがなく、何もしていなくても自動的にお金を生み出せるストックビジネスの典型です。

 

どういった異業種が相応しいのかリサーチしながら候補先を選び、具体的に動いてください。そのリサーチの仕方、主導的な交渉と事業計画など知りたいという方は、過去の私のブログを読み返してみてください。

 

■□■□■

 

以上、大規模店が緊急にとるべき5つの対策を述べてみました。

未曽有の緊急時こそ経営者の実力が試されるときです。実力のなかで最も威力を発揮するのは、知識でもお金でも頭の良さでもありません。「高い志」と「ほとばしる情熱」です。ぜひ緊急事態を乗り切ってください。

 

志は氣の帥(すい)なり。

孟子

―やる気、負けん気、勝気、意気などさまざまな「気」があるが、それらの気を統帥するものこそ「志」である。―

 

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初出掲載:2020 年3 月19 日