Suzu Masa ブログ

辛酸なめた男が美容室「経営」をリアル・ガチで語る

再び、経営と哲学

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二項対立の状態

 

再び「哲学」を取り上げます。

しつこい? 経営に関係ない? 理屈っぽくていやだ? 難解だ?

 

いやいや、確かに取っつきにくいところはありますが、結論から申し上げれば、哲学は自らを助けてくれるんですよ。自分を、組織を、事業を、守る。哲学の本当の力がそこにあるからなのですね。

 

たとえば現在、次のような難解な問題に日本は追い込まれています。

 

・感染者拡大なのにgo to トラベルの推進

・go to トラベルの推進なのに帰省の自粛

・go to トラベルの対象に東京を外したのに、東京よりも感染率の高い大阪、愛知、福岡、沖縄を外さないことの不可解

・感染防止重視なのか経済活動重視なのか、不明確

・感染防止重視なら休業要請する。ただし補償とセットにするべきなのに国はこれ以上の金は出さない

 

こういった矛盾した状態に今、日本はあります。政治の無為無策ここに極まれり、なのですが、こういう矛盾状態のことを「二項対立」といいます。あっちを立てればこっちが立たない。経済優先か感染防止優先か、なんてまさに、あっちを立てればこっちが立たない、二項対立の状態に置かれていますね。

 

弁証法」という思考法

 

そこで、哲学です。

二項対立を解決する方法が、弁証法と言われるものです。弁証法とはヘーゲルが提唱した概念で止揚またはアウフヘーベンヘーゲルはドイツ人なのでドイツ語:なんか重々しい響きでカッコイイですね)と言います。2つの対立した事柄を上の次元へ引き上げて解決をはかること。これが止揚です。

 

では二項対立をどやって止揚するのか?

私なりの考えですが、感染拡大はしていても、死者や重症者数は少ない。

だとしたら、手洗い・うがいの慣行、マスク着用、三密を避ける、お年寄りや基礎疾患を抱えている人に最大限のケアをしながら、という最低限の守るべき感染防止をしながらも、経済活動を粛々と行うこと。

このように考えます。

 

意思決定をどうするか?

 

なにも弁証法は政治の世界だけに当てはまるのではなく、経営者の意思決定にとって必須の思考法と言えるのです。なぜなら、二項対立の状態にいつも経営者は置かれているからです。

 

・従業員は給料も欲しいし休みも欲しいという

・安売りの競合が出現した、うちも安くしようと思うが大丈夫だろうか

・お客様の要望ばかりを聞いていたらメニューの種類が増えて従業員が疲弊してしまった。おまけに特徴のない店になってしまった

・労働時間を見直したら売り上げが下がってしまった

・生産性を重視したら従業員が辞めてしまった

 

などなど、さまざまな二項対立の状態に置かれていて、それを解決する意思決定を絶えずしなければならないのが経営者です。

 

その際、思いあまって「エイヤーッ!」と見切り発車で決定するのではなく、2つの矛盾した事項を上の次元へ引き上げて解決へと導くこと、つまり止揚することが求められています。

 

そう、弁証法の実践です。

 

新たなビジネスチャンスの発見が

 

しかし弁証法を実践すると、矛盾が解決できるだけでなく、そこにまったく新しい地平、つまりビジネスチャンスが生まれるということ。これが凄いところです。

 

たとえば

・「うどんが食べたい」

・「カレーが食べたい」

という二項対立があります。

これを上位の次元へ引き上げて解決をはかる。するとカレーうどんという新しいメニューが誕生する、つまり、ビジネスチャンスが生まれるわけですね(笑)

 

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カレーうどんとは笑い話のようなネタですが、話をわかりやすくしたまでです。上の経営者がかかえる二項対立のなかで、時短営業をして売り上げが落ちたのなら、単価アップをはかるのが弁証法的な実践となります。

単価アップするためにはどうやったらよいのかと考える、これが正しい思考法となります。

 

偉大な3人の哲学者

 

さて、哲学ついでに3人の偉大な哲学者とその主張を、きわめてざっくりと紹介しようと思います。

 

ハイデッガー

ドイツ人。実存主義哲学。

・人間は現在を生きる存在である(現存在:ダーザイン)

・人間は世界のさまざまな存在物とかかわりながら存在している(世界-内-存在)

・人間は死の可能性と向き合うことで真の自己に目覚める(死への存在)

・人間はいつか死ぬ。だからこそ現在を懸命に生きよ。人間は誰とも交換できない最も固有な可能性を持っている。だからこそ死の可能性を自覚することによって、自己の真の実在を確立することができる。

➡死を想え(メメント・モリ)、まさに日本の死生観、武士道に通じる考え方ですね。生を充実させるなら、死を想えというわけです。”一瞬を美しく”なんてどこかの化粧品会社の広告コピーみたいですが、毎日をおろそかに生きるな、思い切り燃焼して生きよう! とても前向きにさせてくれます。

 

フーコー

フランス人。構造主義哲学。

・私たちがその常識から逸脱した瞬間に狂気として排除されてしまう

・常識=枠組みは権力がつくった。「これがノーマルだ」ということが知らず知らずのうちに教え込まれているため、そこから逸脱した欲望や発想は沸き上がってこないよう抑圧されている→その象徴がパノプティコン(監獄)

・人間の考え方が形成されたプロセスは歴史の中に埋もれているので発掘せねばならない(知の考古学)

➡既存の枠組み(フレーム)を壊すことが、新しいビジネスモデルの構築につながるという、まさにイノベーターにとって勇気を与えてくれる哲学です。イノベーションのヒントは歴史の中に埋もれているから発掘しよう。論語で言う「温故知新」ですね。今はまさにイノベーションを起こすとき。

 

レヴィナス

ドイツ人。実存主義後期。

・自我を中心に世界のすべてを理解しようとするから、他者を自己の全体の中に取り込もうとする(エゴイズムの発生)

・「他者」は「私」の外にいる存在

・意識の外にいる他者は操ることができず、その「他者」が「私」を倫理的にさせる

➡経営者は従業員を私物のように扱い、親は我が子を私物のように扱う。経営者の中には一片の埃さえも自分のものだといった私物の考えに取り憑かれている人がいますね。これが決定的な間違いで、他者として認識する。そうすれが、他者をリスペクトすることができ、自分自身を倫理的にして、一人の限界を超えることができる。従業員をリスペクトせよ! 

 

あくまでも要点をかいつまんでまとめた程度です。興味を持たれた哲学者があれば、その人の考え方をもっと知ろうとするきっかけにでもなれば幸いです。

 

哲学の思考法を身につけることは、けっしてムダでも回り道でもありません。最終的にあなたを助けてくれるのです。哲学を語り合える経営者の仲間が増えるといいですね。

 

子どもの学習障害は悲劇だが、組織が学習障害に陥るほうが致命的である。だから、多くの企業は人間の半分の長さも存続できない。

(ピーター・センゲ)

 

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初出掲載:2020 年3 月19 日