Suzu Masa ブログ

辛酸なめた男が美容室「経営」をリアル・ガチで語る

債務超過と事業承継

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債務超過はどれくらいあるか?

 

債務超過に陥っている企業はどれくらいなのでしょうか。

中小企業庁が発表した「中小企業白書」(2019年)によると、全体の35%ということです。

 

問題は、2010年度のコロナ緊急融資によって債務超過はどのくらい増加したのかということです。8割経済、7割経済、つまりコロナ禍以前の売上に比べて7~8割の売上と言われるなかで、あくまでも私見に過ぎませんが、プラス10~15%だろうと推測します。(たぶん、甘い予測だと思われますが。)

ということは、コロナ以前の35%と合計して45~50%は債務超過ということです。

 

3社に1社は廃業の危機

 

ここに、経産省の衝撃的なレポートが加わります。

「衝撃の2025年」と題して

・中小企業の127万社(3社に1社)が廃業の危機

・650万人の雇用が失われる

・22兆円のGDPが失われる

というもので、原因の大半が「後継者がいない」。経営者のボリュームゾーンが65~69歳であり、後継者がいないのは、ストレートに企業の死活問題になります。

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1.社長が60歳以上でかつ後継者不足で事業継続が困難が全体の33%

2.債務超過に陥っている企業は全体の、少なく見積もって40%

 

1、2ともに該当する企業は33%×40%で13%となります。つまり中小企業380万社のうち50万社が後継者不在かつ債務超過企業ということです。

 

 美容業界も例外ではない

 

これはそっくりそのまま美容業界にも当てはまります。

少し前の2018年度のデータですが(厚生科学審議会生活衛生適正分科会)、以下のような内容が発表されています。

 

  • 経営者の年齢構成・・・「60歳以上」が51.4%と過半数
  • 事業継続の困難・・・・「後継者なし」78.2%
  • 今後の経営方針・・・・「廃業」16.2%

 

「60歳以上」の経営者が過半数を占め、「後継者なし」が8割、今後の経営方針を「廃業」と決めている割合が16%ということです。

廃業の危機にあるのは、先に掲げた経産省のデータよりも16%と少ないものの、ここにどれだけの債務超過企業が含まれるのかはわかりません。だいたい大差はないと見てよさそうです。

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いずれにしろ、廃業は間近な将来の方針であり、いずれ後継者問題が解消されなければ、現在営業している美容室の8割は、M&Aの対象にならない限り、後継者なしで廃業を選択せざるを得ません。少なくとも、M&Aの候補のテーブルに載ることができるのは、資産超過のところであり、債務超過では原則としてその対象外です。

 

幸い黒字決算であり、しかし後継者がいないというパターンでは、事業継続できるチャンスはあります。

 

事業承継の方法

 

後継者とのマッチング

 M&Aでは承継されない、地域の小さな商売を繋ぐ「ニホン継業バンク」という、事業を継がせたい人・事業を継ぎたい人とをマッチングさせる専用サイトがあります。もちろんこちらも黒字であることが条件です。

https://keigyo.jp/

 

このマッチングサイトの美容業界版があればいいと思いますね。

 

事業承継特別保証制度

そして、意外と知られていないのが「事業承継特別保証制度」です。

社長の家族や身内のなかに後継者の予定がなく、社員の中から後継者を選ぼうとしても、借入の際の個人保証は荷が重いものです。それを敬遠して、後継者たるに優秀な社員であっても事業承継をためらったりする場合があります。

 

そこで、事業を承継する人の個人保証を撤廃する制度が2020年の4月にスタートしました。それが「事業承継特別保証制度」というものです。

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/hosyoukaijo/index.htm

 

詳しくは、上記サイトを閲覧していただきたいのですが、この制度を利用する場合、財務基準があります。以下の条件を満たす必要があります。

 

①資産超過

②リスケをしていない

③法人と経営者の分離

④EBITDA有利子負債倍率が10倍以内

 

上記のうち④のEBITDA(エビットディーエー)とは、償却前営業利益のことで、

(借入金+社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費)

で10倍以内が条件だということです。

 

営業利益重視の決算

 

金融機関に対して、今までは経常利益が最強でした。だから、営業利益はそこそこにして雑収入、たとえば保険の解約金などを突っ込んで経常利益を膨らませようと手を尽くしました。金融機関に見栄えがいいといわれる決算書を作っていたのですね。

ところがここ数年、そんな財務上の操作から経常利益にはそれほど重きを置かずに、代わって営業利益、つまり本業での儲けを重視するようになったわけで、これは世界の趨勢ともなっているようです。

 

こういった動きはきわめて真っ当なことであり、今後は「営業利益をどうやったら大きく見せるか」に経営者は意識をシフトさせ、本業での儲けをどうやったら高められるかに注力することです。つまり、営業利益重視型に舵を取り、もちろん営業利益重視の決算書にすることがポイントとなります。(この辺は顧問税理士さんにぜひご確認ください)

 

多くの店舗が消滅する業界の近未来

 

後継者がいないことで廃業を選択するケースが今後は、まさに爆発的に増えてきます。

しかしながら、廃業を選択するということは、無借金経営のところか、借入金があったとしても返済できる場合に限られます。

借入金の返済ができない、その他の債務が不履行になるといった場合は、多くは破たんとなります。

廃業、破たんのいずれかを選択せざるを得ないとしても、結論は、多くの店舗の消滅がここ数年で起きるというのが美容業界の近未来です。

それだけ新陳代謝があっていいというのは、また別の話。

 

「自分は、会社という一つの社会の中で、社員家業をしている独立経営体であると考える。」

松下幸之助

 

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初出掲載:2020 年3 月19 日