Suzu Masa ブログ

辛酸なめた男が美容室「経営」をリアル・ガチで語る

【経営の原理原則】シリーズ㉖~㉚

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企業活動のすべてを統合する

 

【経営の原理原則】その㉖

マーケティングとは経営の全体のことである」

 

マーケティングは、販売よりもはるかに大きな活動である。

それは専門化されるべき活動ではなく、全事業にかかる活動である。」(ドラッカー)

 

マーケティングとは、顧客の視点から見た、顧客への価値を高める企業活動のすべてを言います。それは事業全体と言ってもいいし、全社を挙げて活動する必要のあるものです。

マーケティングという言葉の定義を組織全体が理解し、組織を挙げて実践していく必要があります。

 

マーケティングとは、いたずらに顧客に迎合することではありません。それよりも、「自分たちは何をすべきか」というところから、すべてはスタートする。これが事業の目的となり、目的を達成するためのあらゆる企業の活動がマーケティングのもとに統合されるのです。けっして企業活動の単なる1分野にしてはならないのです。

 

「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る。」(論語

▷君子は「義」すなわち「何をなすべきか」をまず考える。小人は「利」すなわち「何をしたら得か」をまず考える。

 

 販売なんていらない!

 

【経営の原理原則】その㉗

「どんなに素晴らしい技術、製品、サービスの中身であっても、マーケティングを十全に機能させなければ売れていかない」

 

マーケティングの目的は、販売を無用にすることである。マーケティングの目的は、顧客を深く理解し、製品やサービスが顧客に適合して、勝手に売れるようにすることである。」(ドラッカー)

 

有名なドラッカーによるマーケティングの定義です。「販売を無用とする」のがマーケティングであると。販売なんていらないーー、すごい言葉です。黙っていても勝手に売れていく、あるいは集客へのコストを一切使うことなく、勝手にお客様がやってくる。

 

あくまでもこれは理想なんだとして神棚に上げておいたままではいけません。

ドラッカーの言うマーケティングとは、社会で何が求められ、社会の中で自分たちは何ができるのかを、まずは知るということです。

知れば今度は、自分たちができるところを一点集中でブラッシュアップしていく

こうすれば、宣伝広告費は一切不要となると。

(まったく宣伝することなく、ホームページでさえ開設していなくて、営業時間7時間、土日休み、紹介がなければ新規客お断り、人時生産性1万5000円、スタッフ1人平均165万円売り上げる美容室があります。まさに販売を無用としている好例です)

 

「人を知る者は智なり、自ら知る者は明なり。」(老子)

 

▷他人のことがわかる者は智者であり、自分のことがわかる者は明者である。人はちょっとした観察眼があれば、他人のことはよくわかるものかもしれない。しかし、自分のことになると途端にわからなくなる。それくらい自分のことはわからないものだ。

 

だから、何度も言いますが、上位20%の上位客に素直に聞いてみることです。なぜ当店に通い続けていただいているのかと。それらの意見のボリュームゾーンが、あなたのお店の最大のお客を惹きつけてやまない魅力、独自性というものなのです。

それが見つかったら、あとはマーケティングの機能をフル稼働させていくだけ。

 

以上、どんなに素晴らしい技術、製品、サービスの中身であっても、マーケティングを十全に機能させなければ売れていかないのです。

 

即断即決の危うさ

 

【経営の新常識】その㉘

「良いモノが売れるとは限らない」

 

良いモノが必ずしも売れるとは限りません。

お客様を中心に考え、「お客様が欲しいモノが売れる」のです。

ここにマーケティングの重要性と真実があります。

 

これを端的に言い表した格言があります。

「私はイチゴクリームが大好物だが、魚はどういうわけかミミズが大好物だ。だから魚釣りをする場合、自分のことは考えず、魚の好物のことを考える。」(デール・カーネギー)

 

魚を釣るのにイチゴクリームをエサにしても釣ることはできません。わかりきっていることですが、意外にこれができません。ビジネスをやっていると、イチゴクリームで魚を釣ろうとしている人がたくさんいるからです。

自分が欲しいものをつくっても、あるいはサービスのメニュー化をしても、お客様が買ってくれるわけがなく、お客様が欲しいものでなくてはダメだということです。

 

さらに、こんな格言もあります。

「“良いモノは売れる”という考え方は、自分を中心に世界が回っていると考える『天動説』と同じ。」(正垣泰彦:サイゼリヤ創業者)

 

職人肌の理美容業界に存在する特有の考え方でもありますが、自分が良いモノと認めたものが売れると考えるのは、正垣氏が言われるように天動説のような、つまり自分中心に世界が回っていると言っているのと一緒です。

お客様中心に物事を考え、「お客様が欲しいものが売れる」と考えないといけません。当たり前のことですが、これができていないところが大半です。

 

そんな間違いを事前に防ぐ方法が、テストマーケティングです。(テストマーケティングのやり方がわからないという方はご一報ください)

 

さて、何事も温故知新です。故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。

中国・明の時代に著された『呻吟語』にこういう一文があります。(この書は、生きる指針を学ぶために必読の書として、特に混迷を極める現代人に読んでほしいと思います。)

 

「利を興すには太(はなは)だ急なることなかれ。左視右眄(さしうべん)せんことを要す。」

 

▷新しい事業を始めるときには、いくらスピードが大事とは言っても、あまり急ぎすぎてはならない。しっかりと周りの状況(市場調査や競合他社の動向)を見極めてからとりかかることが大切である。

 

私が出合ったケースでこういうのがあります。その経営者は有名な自己啓発本に心酔していて、その本には“即断即決”が成功への道と記されているらしいのですね。そこで飛び込んできた儲け話に即断即決で数千万円の投資をしました。私は大反対したのですが、聞き入れることはなく、結局、投資金は回収されず水の泡となってしまったのです。

 

結局は経営者次第

 

【経営の原理原則】その㉙

「マネジメントは経営者の“人となり”」

 

「マネジメントは常に、組織――つまり、人間関係の網の目――のなかで行わなければならない。経営者がそれゆえ、常に模範となり、その行いは大切である。しかし同様に大切なことは、その人となりである‥‥。」(ドラッカー)

 

マネジメントは人が行うもの。だから、経営者の人間力こそがモノを言うのですね。

このシリーズの10回目「組織は経営者の器以上に大きくなれない?」で述べた「人間力」のことです。

 

この人間力のことを『論語』では「徳」と表現しています。

 

「子の曰く、政(せい)を為(な)すに徳を以(もっ)てすれば、譬(たと)えば北辰(ほくしん)の其(そ)の所に居て、衆星(しゅうせい)のこれに共(きょう)するがごとし。」

 

▷先生(孔子)が言われた、「政治をするのに徳をもってすれば、ちょうど北極星がその場にいるだけで、多くの星がその方向に向かって挨拶をするようだ」と。

 

 

「徳」によって国や組織を治める。これを「徳治」と言います。徳治によってしか、組織はまとまらないし維持できないと『論語』では訴えかけているのですね。

2500年の時を超えて、ドラッカーも同じことを訴えているわけです。

「徳を持った君子でしか組織を運営できない」と。

おおいに徳性を磨きたいと思います。

 

そして、徳治を行うリーダーのもとには、すばらしい人材が集まってきます。同じく『論語』の次の言葉のように。

 

「徳は弧(こ)ならず。必ず隣(となり)あり。」

 

▷徳のある人は孤立することはない。なぜなら、必ず人材が徳のあるリーダーを慕って集まってくるから。

その通り、なんの将来への保障などなくても、孔子のもとには4000人の弟子が集まってきたのです。その求心力は孔子の「徳」だったのです。

 

こういう時代だからこそなおのこと、どのような組織であっても、徳治を行うリーダー、つまり「君子」が求められているわけです。

私利私欲丸出しの経営者ついていく人は打算だけ。スタッフは容易に本性を見抜きます。

 

どうやれば君子となれるのか、一緒に勉強しましょう!

 

利益はあくまでも結果

 

【経営の原理原則】その㉚

「利益は目的ではない」

 

利益の重要性は言うまでもありませんが、事業の目的は利益を上げることではありません。

もちろん、こんなご時世です。利益が出なければ会社は存続することができず、今はその存続できるかどうかが最大かつ喫緊の課題であることは否定しません。

だからといって企業の目的を、利益を出すこととイコールであっていいはずがないのです。

 

その理由を述べる前に、いつものドラッカーの言葉を掲げます。イノベーションの成功例としてマークス・アンド・スペンサー社を取り上げてドラッカーはこのように述べています。

「では、利益目標はどうなのか。その答えは、そのようなものは存在したことがなかった、である。利益の達成目標は、マークス・アンド・スペンサー社では禁句であった。明らかに同社は、利益性が非常に高く、非常に利益意識が高い。だが同社は、利益を目標ではなく、事業の必要要件として、つまり達成目標としてではなく、要件と見ている。利益は、マークス・アンド・スペンサー社の見解では、事業活動の目的よりむしろ、正しいことを行った結果である。」

 

さらに別の書では、「事業の目標として利益のみを強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる」と述べています。

 

そして、今を去ること2500年前の『論語』にも、こうしたためられているのです。

 

「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る。」

 

▷君子は「義」つまり「何をなすべきか」をまず考える。一方、小人は「利」つまり「何をしたら得か」をまず考える。

 

論語』では、別のところでこうも述べられています。

 

「利に放(よ)りて行なえば、怨み多し。」

 

▷目先の利益ばかりを考えて行動していると、いたずらに周りに敵をつくり、怨みを買うことが多くなる。

 

こういう時代です、あくまでも事業活動の「条件」あるいは「結果」であるはずの「利益」を「目的」や「目標」とはき違えないでください。

私たちは何のために存在するのか? その答えが企業の存在理由であり、目的を果たすことが使命となります。

 

そして企業の存在理由は、「環境、使命、強みについての前提が、それぞれの現実に合致していなければならない」(ドラッカー)のです。つまり、「現実」=「市場」ということで、勝手な思い込み、独りよがりでは、これまたいけないということです。

 

2500年の時を超えた二人の巨人、孔子ドラッカーも希求していることは、「君子」によるマネジメントなのですね。

 

「君子」による「徳治」こそ、あらゆる時代を超えて求められているのですが、ことに理美容業界のようにたくさんの企業数があれば、その数だけ君子が求められているのです。

また、たくさんの君子が輩出できれば、それだけ個々の企業の力であり、業界の力であり、ひいては国の力となります。

これが2500年の時を超えて、孔子ドラッカーが生涯を賭して訴えかけたことなのです。

 

今回の【原理原則】シリーズは、いちはやくFacebookに連続投稿している記事が元ネタになっています。この㉚の投稿をしたところ、ある方から「企業目的は理念をもとにビジョンを実現すること。そのためのガソリンが利益」とコメントをいただきました。

確かにその通り、いわば教科書通りのコメントなのですが、組織を動かすのは「人」であること、しかもその人は、リーダーである「君子」が求められているという重要な視点、これを忘れてはなりません。

 

ところで、頻繁に『論語』のことを話題に出しているせいか、こんなお訪ねをいただきました。論語のわかりやすい入門書はないですか、と。そこでご紹介したいのが安岡定子著『自分を支える「論語」の言葉50』です。論語のなかの厳選された50の言葉からにじみ出る、ズシリと重く響く人生の格言をお聞きください。

 

自分を支える「論語」の言葉50―20代で読んでおきたい「一生の教科書」

 

論語はけっして古臭くて神棚に上げておくような書ではなく、それどころか2500年経った今の時代にあっても、真剣に向き合えば、刺激的で挑戦的、魂を揺さぶってやまない感動の書であることは間違いありません。

 

以下に引用した論語の文章にある「習う」という文字。大抵は、“おさらいをする”なんて訳されていますけど、それでは孔子の考えを浅くとらえすぎでしょう。私はこのようにとらえています。

 

「学びて時にこれを習う、亦(ま)た説(よろこ)ばしからずや。」(論語)

▷学んでは時々現実にフィードバックしてPDCAを回す。いかにも心嬉しいことだ。なぜなら、学んだことを実践で活かすことによって初めて具体的な成果が出るからだ。(学びは実践で活かさなければなんの意味もない)

 

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初出掲載:2020 年3 月19 日