Suzu Masa ブログ

辛酸なめた男が美容室「経営」をリアル・ガチで語る

【経営の原理原則】シリーズ㊲~㊴

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損益分岐点と安全余裕率

 

【経営の原理原則】その37

「潰したくないなら損益分岐点を知れ」

 

今、私の主宰している「MASAサロン経営研究会」では専用のFacebookページを設けています。

https://www.facebook.com/masa.salonkeiei

 

ここで財務に関する投稿をここのところ頻繁に行っているのですが、他の投稿より際立って注目度が高い傾向にあります。

私の個人的なFacebookのページで「いいね!」をいただく数よりも、リーチ数は数倍から数十倍もあるのですね。

さすがに現在の状況をよく表しているようで、今回は財務の話をします。そして表題となったテーマ、「潰したくないなら損益分岐点を知れ」です。

“知れ”だなんて命令口調でエラソーですが、これくらい強調しておいたほうがいいと思ってですね。

 

読者の反感は一切考慮せず、はい、本題に入ります。

 

はたして自社の「損」もなければ「益」もない、収支トントンという損益分岐点はどれくらいなのか、それを売上高で表した損益分岐点売上高はいくらなのか。

これを知るということです。

 

損益分岐点を知れば、それ以上売上を上げれば収益となり、それ以下なら損失となります。

損益分岐点は以下の式で求めます。

 

 

つまり、損益分岐点を超える売上高を上げれば利益が出る、反対に、損益分岐点に届かない売上では損失が生じるということです。

[図で示せば、損益分岐点を売上高で超えれば、それだけ利益が増える(右上の赤い三角の部分のところ)、越えなければ損失が増えるという理屈がよくわかると思います]

 

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実際に数字を入れて計算してみましょう。

今、売上高3000万円、固定費が売上高の85%を占め、2550万円とします。

変動費率は売上に対する原価(材料費)の割合ですから、10%とします。

 

固定費2550万円÷(1-10%)=2833万円

 

2833万円が損益分岐点となります。

 

次に、「安全余裕率」という指標も重要です。現在の売上高から何%落ちても赤字にならないかという指標のことで、次の計算式で求められます。

 

 

実際の数字を当てはめてみましょう。

 

(売上高3000万円-損益分岐点売上高2833万円)÷売上高3000万円=5.6%

 

つまり、現在の売上高から5.6%(167万円)以内の売上ダウンであれば利益を確保できるものの、それ以上ダウンすれば赤字になるということです。

 

美容業は、人件費や設備投資などの固定費が多くを占める固定費型ビジネスです。

固定費型のビジネスの特徴として、損益分岐点に達するまでにはかなりの売上を出さないといけないのですが、損益分岐点を超えてしまえば、得られる利益は大きくなるということです。

 

美容室は体質的に赤字になりやすい

 

ですから、こういうことが見・え・て・きます。

現在のような新型コロナのパンデミックは収束の目途が立たず、度重なる緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置の発令で、コロナ以前のような売上は上げられません。

しかも、安全余裕率が低い事業の典型ですから、簡単に損益分岐点を割り込んで赤字になってしまう可能性がとても高いのですね。

 

経営の原理原則シリーズの3回目「緊急時には経費の削減。次に売上を伸ばす方策を考える」でお話したように、安全余裕率を超えて売上が減ってしまった、そんな緊急時での打つべき手は、まずは経費削減。次に売上増大のための方策を考えるという手順に従ってください。

(美容室で初めての株式の上場をした(株)田谷は、大幅な赤字に落ち込み、緊急対策として定石通りコストの削減を発表しました。33店舗の閉鎖ということです。これで売上はピーク時の半分を軽く割り込みますが、コスト削減が優先順位の第一番目に来るという見本です)

 

それはともかく、この経緯節減のとっておきの方法があります。いわば“裏ワザ”というべきものですが、クライアントさんだけが手にできる情報となります。悪しからず。

 

 戦略的思考とは?

 

【経営の原理原則】その38

「参謀を持て」

 

参謀を語る場合、名著があります。大前研一氏の『企業参謀』です。大前氏の記念すべきデビュー作だけに気合が入っています。

 

[新装版] 企業参謀 戦略的思考とは何か

 

ここで語られている企業参謀の条件とは何か。要約しますと、いま何が問題になっているのか、という問題点の発見と絞り込み方、そして問題解決のための抽象化プロセスこそが戦略的思考であり、こういう戦略的思考のできる人こそが参謀の条件である、ということです。

 

難しいですね。何を言ってるのかわかりませんか。

たとえば「抽象化」。

人間は、自然界のなかから花を識別します。同じ花でも、桜、ハス、桔梗、バラ・・といったように名前をあててさらに細分化して世界を認識しています。これを抽象化と言います。

経済活動の抽象化、その代表例がお金です。

人と人との関係、その抽象化が言葉です。

ですから抽象化とは、人間が世界と渡り合って生きていくうえで必須の能力となります。

 

何もかもわかりやすくすればいいってわけじゃなく、最近のビジネス書で不満なのが、内容はどんどん薄っぺらで平易になっていまっていくということ。

ところがこの本はそんな生易しくはありません。思考のプロセスを追う、つまり抽象化は簡単にはいかないからです。たとえば著書のなかで述べられている理容店の戦略的思考。あのQBハウスの事業モデルの原点となった思考法です。

コンサルタントの必読の書と言われるゆえんですが、経営者はもとよりナンバー2、右腕、参謀などのポジションにある人にも必読の書でしょう。

難しい本を読むことで抽象化能力が鍛えられますし、思考力がそれだけ身に付きます。

 

参謀の条件と資質

 

参謀とは、ナンバー2、右腕、補佐役といった役割を持つ人の総称です。

さて、優れた参謀はどういった人物像でしょうか。有名なトップとその参謀の取り合わせを挙げるならわかりやすくなります。こんな人たちです。

豊臣秀吉黒田官兵衛本田宗一郎藤沢武夫井深大盛田昭夫劉備玄徳に諸葛孔明、皇帝ヴィルヘルム1世にビスマルク・・・といった、名コンビが思いつきます。

これらの人物の組み合わせから、いずれも経営トップの不足した資質を補う人物が参謀役にふさわしい資質と言えると思います。

たとえば、クルマづくりに異常なまでの能力と執着を持った本田に、圧倒的に不足した営業力をもって補ったのが藤沢です。人心掌握術に長け、統率力に異能を発揮した玄徳に不足していた戦略力を補った資質の持ち主が、玄徳が三顧の礼を持って迎えた孔明です。

 

そして、もうひとつ。参謀役の重要な役割があります。

それは、正しいと思ったらトップに意見を堂々と言うことです。

 

コンサルの出番

 

業界で名のあるコンサルの方がいます。その方はこう言っています。右腕とは、トップが白いものを黒というなら、黒という人のことだと。

とんでもないことです。

四六時中、事業のことを考えているのがトップですが、時に誤った判断をして暴走してしまいかねません。

こんなとき、「社長、それは白です」と堂々と言える人が右腕、あるいは参謀の条件です。トップにとって耳の痛いことでも苦言を呈する気概のある人が参謀の条件です。参謀がトップのイエスマンでは、組織は崩壊してしまいます。それは歴史が証明していることです。

 

また、トップも参謀役の意見は尊重して、自分が間違っていると気付けば率直に謝って軌道修正する謙虚さが必要です。

 

そういう人物が参謀役として社内に存在しないのであれば、社外を頼るしかありません。

それがコンサルタントというプロフェッショナルです。(上記のように質の悪いコンサルにはくれぐれもご注意を)

参謀役となるコンサルですが、複雑で多様性の時代での役割となりますから、ある程度の複数の能力とそれらを総合する力が必要です。

財務知識に長けていたからって、マーケティング力がおろそかであってはなりません。マーケティング力があっても組織マネジメント力が備わっていなければなりません。組織マネジメント力があっても、新事業を創出する構想力がなければならないでしょう。難しくて厳しい時代です、単発の能力だけではとても経営トップの参謀役は不適格です。

そんな複数の能力を組み合わせて抽象化して戦略的に統合する、そんなコンサルタントのことです。

 

そんな能力を持ったコンサルっているんですか?

はいはい、目の前にいるじゃないですか(爆 

三顧の礼をもって迎えてくださいね(笑)

 

鉄板中の鉄板

 

【経営の原理原則】その39

「ミッション、ビジョン、バリューの確立」

 

今回は、原理原則のなかの原理原則、「鉄板」中の鉄板と言える「ミッション、ビジョン、バリュー」についてお話しましょう。

なぜ、鉄板なのか。そして、なにかと誤解や混同が多い「経営理念」との違いにもふれてみたいと思います。

 

ドラッカーの定義とは?

ドラッカーは『ネクスト・ソサエティ』のなかでミッション・ビジョン・バリューの必要性を唱えています。そのドラッカーの定義に従いながら私見も交えてお話します。

 

ミッションとは‥

ミッションとは「使命」「目的」あるいは「存在意義」という意味です。

ドラッカーは、組織のリーダーが最初におこなう仕事のひとつは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義することとしています。

組織のミッションさえ社員が正確に理解できれば、自らが貢献すべきものを見つけ出し、具体的な目標を設定し仕事に取り組めるということです。

 

松下幸之助さんの有名な話に、水道哲学という話があります。

 

ある夏の暑い日に、他人の家の庭にあった水道の水を勝手に飲む男を見かけた松下幸之助さんは、「水はたくさんあるから安い。だから勝手に飲んでも咎められない」と考え、「たくさんあるものは安くなる」ということに気づきます。

そして、

「家電製品をたくさん作って、安く提供し、人々の生活を便利にすることに貢献しよう」と考えて、社員にもそう話します。

その考えに共鳴し、「自分たちの仕事は単なる金儲けではない。人々の生活に貢献する仕事なのだ」と考えた社員たちのマインドセットが後の松下電器産業の発展を下支えしたというお話です。

松下幸之助さんの水道哲学は、自分たちの事業の存在意義を表していますから、「ミッション」ですね。

 

ビジョンとは‥

ビジョンは「ミッションが実現した姿(将来像)」と言い換えることができます。

リーダーが「こうありたい」という姿、自社が目指すイメージをわかりやすく組織の人間に伝えることができれば、組織の人間は実現に向けて巻き込まれていきます。リーダーの求心力が最も発揮される機会でしょう。

ビジョン、ミッション、バリューのなかでも、社員の動機付け、マインドセットという意味でもっとも重要であるのは、ビジョンです。

ビジョンは企業が目指す将来像です。

自分たちがどこへ行こうとしているのかがわからないと、仕事に取り組む動機付けができません。

明確なビジョンは、社内の求心力を高め、ベクトルを揃える効果があります。

 

バリューとは‥

バリューとは「価値観」「価値基準」のことです。

組織や企業に所属するメンバーにとっては価値基準が明確化されることで、将来(ビジョン)に向かうことができ、さらにミッションの実現につながります。

また行動基準になりますので、ミッションやビジョンよりも、より理解しやすい具体的な内容であることが求められるのです。社員は「自社の価値基準のもと行動する」ことなり、企業が与えたい価値を顧客に提供していきます。

 

「ミッション・ビジョン・バリュー」はいずれも社会的な理想に近く、ビジネスでいえば上位の概念です。リーダーは、理想を実現するためにミッションを考え、目指すべきビジョンとビジョンを達成するためのバリューを決めなければなりません。

 

経営理念との違い

 

多くの企業は同様の意味あいで「経営理念」や「企業理念」を公表しています。しかし、それらの言葉には「ミッション」が欠けているか、あったとしても明確性に欠けている場合が少なくありません。

これは、「ミッション」の概念そのものが日本になじみのないものだったことが一因だと言われています。

ミッションは「使命」「役割」のことなのですが、もともとはラテン語から派生し、キリスト教の福音(多くの人に教えを広める使命)に負っている概念です。つまり、自分たちの組織がミッションを果たすことで社会全体を良くするという強い信念が必要となるのです。

しかし、ミッションを単なる「自分(自社)が負うべき軽い役割」程度の意識しか持たない場合、ビジョンも意識の低いものとなります。意識の低いビジョンは、組織のメンバーの求心力にはつながらず、言葉だけがひとり歩きしてしまう可能性もあるのです。

以上がミッションと経営理念の大きな違いです。

 

そして「ストラテジー

 

ミッションの実現のためには、バリューとビジョンが必要であることは理解できたと思います。ビジョンとバリューを実現化するのに必要なのが具体的な「戦略(ストラテジー)」です。

具体的な戦略(ストラテジー)には「その組織にとって成果とは何か」を明確にし、求める成果と、成果のひとつである利益を求めるための計画を立てる必要があるのです。

戦略は、バリューやビジョンから離れて単独に存在しているわけではないのです。

もちろん、その下に続く「戦術」もそうです。

こういうコロナ禍など行き先が見えない不安な環境下では、ミッション、ビジョン、バリューを無視した(あるいは無視しようにも、もともとそれらの概念自体がない)、目先の儲け話などに貴重な経営資源を投入してしまう場合が見受けられるのですが、まったく見当違いの誤った選択です。

 

ゴールは?

 

ミッションを実現することは非常に困難なことです。ですから、その第一歩として戦略(ストラテジー)を立てながら、バリューを提示しつつビジョンの実現へと結びつけます。

つまり、ミッション・ビジョン・バリューのなかでは、ビジョンがひとつの目的であり、ゴールです。リーダーが明確でわかりやすいビジョンを示すことができれば、メンバーの行動や意欲が上がります。

その上で、組織内で大切にしている価値観を共有して目標であるビジョンの実現、ゴールへ向けて結束し活動できるのです。

ここでKIRINグループのミッション、ビジョン、バリューを参考までに紹介します。

 

KIRINグループの例

・ミッション:「あたらしい飲料文化をお客様と共に創り、人と社会に、もっと元気と潤いをひろげていく。」
・ビジョン:「日本をいちばん元気にする、飲料のリーディングカンパニーになる。」
・バリュー:「● お客様にとってあたらしい価値 ●お客さまの安全・安心、おいしさへのこだわり ●お客様・パートナー・地域とのWin-Win ●熱意と誠意」

 

 さまざまな価値観にあわせて、新しい価値を作っていくことがKIRINのミッションです。基本のビジョンをもとに、2012年には「キリン・グループ・ビジョン2021」という長期経営構想を策定しています。

ミッション・ビジョン・バリューのほかにブランドとしての約束「『飲みもの』を進化させることで、『みんなの日常』をあたらしくしていくこと。」も発表しています。

 

人はお金だけで動くのではありません。

当時の松下電器の社員のように、社長のミッションに共鳴し、「自分たちの仕事は単なる金儲けではない。人々の生活に貢献する仕事なのだ」とのマインドセットが引き起こされたのです。

 

ミッション、ビジョン、バリューが確立され、それが社員の血となり肉となって行動を促している企業は、どこよりも強い組織です。

ちなみに私=Suzu Masaコンサルティングのミッションは「クライアントのビジョン実現を全身全霊サポートする」です。

 

「企業の目的として有効な定義はただ一つである。顧客の創造である。」

ドラッカー

 

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初出掲載:2020 年3 月19 日