Suzu Masa ブログ

辛酸なめた男が美容室「経営」をリアル・ガチで語る

美容業の本当の豊かさは「いろは歌」が教えてくれる

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いろはにほへと・・

 

今回は「いろは歌」を取り上げます。ご存知、いろはにほへと‥‥で始まる歌です。

 

取り上げる理由は、美容業の本質にかかわることで、この歌の内容を知ることによって、対個人接客サービス業である美容業の大きな可能性に気づいてほしいと思ったからです。

 

それではいきます。

 

「いろはにほへと ちりぬるを

わかよたれそ つねならむ

うゐのおくやま けふこえて

あさきゆめみし ゑひもせす」

 

古来からわが国に伝わる「いろは歌」です。現代で言う五十音表のようなもので、仮名を重複させずに七五調に並べた歌のことです。

 

高校生のころ、古文の授業で教えられました。漢字を使って、このように。

「色は匂へど 散りぬるを

我が世誰ぞ 常ならむ

有為の奥山 今日越えて

浅き夢見じ 酔ひもせず」

 

こうやって漢字にすると、なんとなく意味するところがわかってきそうですね。

では、そこに秘められた本来の「意味」を探ってみましょう。

 

仏教の教えを歌にした

 

これは仏教の教えを歌にしたものなのですね。このような意味になります。

 

色は匂へど 散りぬるを

 ―桜は今、満開に咲き誇っているが、やがて散ってしまう運命にある(諸行無常

 

我が世誰ぞ 常ならむ

 ―私たちも、いつまでも生きられるものではない(是生滅法)

 

有為の奥山 今日越えて

 ―迷いの多い人生の苦しみを今日乗り越えて(生滅滅已)

 

浅き夢見じ 酔ひもせず

 ―はかない夢を見ることも、酔いしれることもしない(寂滅為楽)

 

諸行無常(しょぎょうむじょう)」:万物は常に移ろい変わっていく。

「是生滅法(ぜしょうめっぽう)」:万物は消滅することが真理である。

「生滅滅已(しょうめつめつい)」:生死ある世界を葬り去って、涅槃(ねはん)へと到達すること。

「寂滅為楽(じゃくめついらく)」:迷いの世界から離れた心やすらかな悟りの境地が、楽しいものであるということ。

 

芥川龍之介をしてみずからの作品『侏儒の言葉』でこう言わしめています。

「我々の生活に欠くべからざる思想は或(あるい)は『いろは』短歌に尽きているのかも知れない。」

 

いろは歌」の真の意味は、どうやら仏道修行の素晴らしさをうたったものなのですね。でも、そんなことができるのは、厳しい修業をやり遂げて悟りを得られるほんの一部の人だけです。それでは一般庶民である私たちの生きる琴線には触れません。琴線に触れなければ、これほど全国に普及するはずもありません。

 

ですから、生きる困難・苦難が人生であるとすれば、けっして夢や空想に逃れないで、ありのままを受け止めて、積極果敢に生きていってほしい。そういう人生の応援歌として解釈したほうがいいと思います。でなかったら、これほど親しまれ普及することはなかったと私は思うのですね。私の解釈が違っているのだとしたら教えてください。

 

困難苦難を生きること

 

そこで、このコロナ禍の現状です。感染者の数というよりも、自殺者の数が飛躍的に多くなっていることがとても心配です。

 

9月は1805人で前年同月比で8.6%増加。なかでも女性の自殺者は8月に4割増と急増していて、9月も28%増加しています。

10月ではさらに増加して2年7か月ぶりに2000人を突破して2153人。前年同月比でなんと4割増です。女性はなんと82.6%増、数にして851人増えています。

 

コロナによる解雇や雇い止めは7万人以上で、8月の労働力調査によると、パート、アルバイトは前年同月比で74万人も減っていて、その多くを占めるのが女性で63万人だそうです。はっきり言って、女性など立場の弱い人にしわ寄せが行っていることが自殺急増の原因だと思われます。

 

現在の完全失業率は3%、雇用調整助成金で雇用がかろうじて確保できている人が2%、もう求職活動をあきらめてしまった人(隠れ失業者)の割合が2%、さらに大手企業がリストラを加速させている現状がありますから、完全失業率はすでに7%が実態で、近い将来、10%を超えるかもしれないと大変危惧します。

 

過去の統計からはっきりしていることは、完全失業率が1%上がるごとに自殺者は2000~2500人増えるとされていますから、はたして自殺者は過去最悪レベルの3万人を大きく超えてしまうのでしょうか。考えただけで空恐ろしくなります。

 

人生の応援歌を歌おう

 

そこで、なのです。

いろは歌」の後半2つの歌の役割を美容師さんが担っていただけないかと思うのですね。つまり、生きる困難・苦難が人生の定め。だとしても、けっして夢や空想に逃れないで、ありのまま受け止めて、積極果敢に生きていってほしい。そういう人生の応援歌を、傷つき疲れ切ったお客様のお一人おひとりに歌ってあげてほしい。

 

別に声を上げて歌ってとお願いしてるのではなく、そういう気持ちでお客様に接してほしいと言っているのです。

 

考えてもみてください。

髪の毛は天然自然の力で伸びます。必然的にそれが来店動機になります。しかも施術料金はリーズナブルで1対1のフェイスツーフェイスで長時間対応。1つの空間にお客様を独占的に閉じ込めておくことができます。

 

このような、他業種がうらやむほどの優位な業態の特性をもっています。

しかも施術の内容は、問題点の解決策であり、なにが問題なのか、寄り添いカウンセリングで明らかにし、解決をしていく。それが仕事の価値です。

 

そういった業態特性から、心にも触れることは自然の成り行きとも言えます。

そんなむずかしいことではありません。お客様に対して、「あなたのことが大切だ」「あなたに出会えてうれしい」「あなたが生きていること自体かけがえがないこと」‥‥そんな気持ちで対応するだけで充分なのです。

 

このことが今、最も希求されている、まさに乾いた砂が水を呑み込むように求められている。これこそ美容室という業態特性から見た最大の価値、つまり美容室こそお客様の「自己の重要感が満たされる」時と場所である、ということなのだと思うのです。

 

思い起こされるある光景

 

こんな光景が思い出されます。取材中の出来事でした。

ある中年の男性が、アシスタントの美容師さん二人に向かって幾種類かのネクタイを見てもらっていたのです。そして間もなく満面の笑みでその男性は帰っていきました。

もちろん話の内容はわかりません。直接の取材相手だった経営者の話と、推測を交えると、およそこういうことだったように思えます。

 

「○○ちゃん、どう? この前ネクタイがダサイって言ってたから、アドバイスに従っていくつか選んできたんだ。どれが似合う?」

すると、アシスタントの子が、ああでもない、こうでもないと、あけすけに言い合いながら、一番似合うネクタイを選んであげた。

それで中年男性は喜んで帰った。

 

きっとネクタイ選びの相談をする人が身近に(家族にも職場にも)いなかったのですね。そこで普段から通っている美容室のアシスタントに相談した。そういった経緯なのでしょう。

 

これも、その人の「自己の重要感を満たす」ことになったのだと思います。「自己の重要感を満たす」ことは、そうして差し上げようと思うことで、いくらでも応用ができます。それも、お金は一円もかからずに。

 

長時間の個人対応でお客様のことを知ることができた。今度来店されるときは、こんな話題を振ってみよう。あるいは、こんなヘアスタイルを提案してみよう。なぜなら、「あなたと会えて私はうれしいから」その喜びの気持ちをお返ししよう、ってなるから。

それだけ、“あなたのことを考えている”という意志の表れなのです。そんな意思を表明できるところって、美容室以外あり得ないじゃないですか!

 

美容業は人間性回復のビジネス

 

自殺をするほど追い込まれるのは、このように経済的な条件や健康上の問題が直接のきっかけでしょう。でも、自殺を押し留めるよりも、むしろ自殺を誘発させてしまうのは、誰も身近に相談相手がいないといった、絶望的な孤独感です。

だから、一番欲しいはずの「自己の重要感」が誰からも満たされることがない。

 

それが、身近な場所で、来店動機は自然がつくってくれて、しかもリーズナブルな料金で、親身になって自分のことを気遣ってくれる。そういう、気安くて尊い場が美容室であり、相談相手は美容師であるということ。凄いことじゃないですか!!

 

事実、お隣の理容業は「ゲートキーパー宣言」をして組合を挙げて自殺防止の取り組みを行っています。気づき、声掛け、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守るという内容ですが、これなど業態の特性からとても良い試みだと思います。

 

ただ、それほど大掛かりではなくても、個店単位ですぐに取り組むことができる。それは、なにも新しいことをすることではなく、お客様のことを大切に思いながら、大切に思っています、ありがとうございます、そんな気持ちを示すことだけでいいのです。

 

これこそ、お客様から最も求められていることであるし、また、すぐにできることであるし、まさに「美容が提供できる最大の価値」なのだと確信するのですね。まして、居場所がない、働く場所がない、ふっと安堵の溜息をつける機会がない。そして仕事のほとんどがAIに取って代えられるという、人間疎外の危機的状況が高まっているのが現代なのです。

 

人間性を回復させることこそ、今、最大の価値。

まさに、美容業こそ「人間性を回復させるビジネス」の最前線に位置しているのではありませんか!

 

 

リーダーになるのは、これでもかというほどの顧客体験に焦点を合わせたところ(会社)のはずだ。

ジェフ・ベゾス

 

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初出掲載:2020 年3 月19 日