Suzu Masa ブログ

辛酸なめた男が美容室「経営」をリアル・ガチで語る

美容室経営5つのNG 【5】本末転倒

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不振の根本原因とは?

【5】本末転倒

 美容業界は理容業界も含めて、ズバリ「本末転倒」業界です。だから、業界はいつまでたっても浮上しない。いや、浮上しないどころか、沈むばっかりです。

 

本末転倒とは、大事なことをおろそかにして、どうでもいいことのみにこだわるという意味です。

 

では、おろそかにしている大事なこととは何かといったら、経営の原理原則で最も重要なこと、つまり「顧客」のことです。そう、お客様のことをおろそかにしていることです。

「何を言ってるんだ。お客様第一主義に徹しているぞ」と怒りの反論が返ってきそうですが、それでは集客が思うようにできないのはなぜか? 集客できたとしてもリピート率が低いのはなぜなのか? なぜお客様は去って行くのか? 上位顧客が誰と誰? その上位顧客がサロンに求めている価値は? 上位客の人生の価値は? 

わかることができる環境にありながら、これがわかっていません。

 

つまり、お客様のことを知っているようで、じつは知らないのです。知ろうとする努力が伝わらないから初めてのお客はお店から去って行くのです。去って行く理由を明確にできないまま、また新規を集めればいいやと、いつのまにか新規集客ばかりに注力していって、大切な固定客どころか上位客の流出までを招くようになってしまうのです。

 

そんな大事なことがわかっていなくて、どこかの誰かの口車に乗って、もっと広告費をかけなけりゃいけない、話題の商材を仕入れなきゃいけない、話題のメニューを導入しなけりゃいけない――そんな枝葉の部分ばかりに注力してますますレッドオーシャンの海に溺れようとするのです。

これを本末転倒と言います。

 

衝撃的な経験

 

似たような経験をかつてしたことがあります。

ウエラの招きで青山のスタジオがオープンした記念に私のところへ講演の依頼が来ました。ウエラ韓国の取引先サロンの経営者がやって来るので話をしてほしいと。どんな内容が希望かとウエラジャパンの担当者に訪ねると、韓国経済は瀕死の状態でIMFから緊急支援を受けたばかり、美容室も大型サロンがバタバタと潰れている、だからすぐにでも儲かる話をしてほしいと。

 

すぐにでも儲かるなんて大変虫のいい話で、結果はすぐ出ても劇薬で副作用が激しいですよ、そんな話でよかったらお話ししますけど、と言うと、それでは困るので永続的な儲かる話をお願いできないかと。

 

要するにマーケティングのなかでも永続的に効果が出る販促の話を、それではお話しようと資料を作成し当日に臨みました。

 

韓国からやって来た受講者は350人の大人数です。350人とは壮観です。後ろの席の人の顔は見えません。それで選りすぐった販促の話題を始めました。私の話と通訳の方の話、交互にそして一斉に受講生の顔の向きが変わるのは感動ものですよ。

 

しかしどうしたことか、いまいち受けがよくないのですね。希望通り儲かる話を実例を含めて公開していったのですが、だんだんと空気が重くなるばかりなのです。

 

これはウエラの日本側と韓国側に十分コミュニケーションが取れていなかったに違いない。韓国の経営者は違う内容の話を求めているのではないか。

それではと、思い切って話題を180度変えてみました。儲かる話から、一転してある経営者の生きざまの話に振ってみたのです。

 

するとどうでしょう、会場の空気は一変。熱気の波がザアーッと押し寄せてきました。みんな身を乗り出しながら、私の顔と通訳の顔を力強く首の角度を鋭角に曲げて交互に見るのです。驚いたことに話の途中、質問に立つ人もいるのですね。例えばこんな質問です。

 

 会場「なぜ経営者はそんなにも従業員に一生懸命になれるんですか?」

 「本人じゃないのでわかりませんが、これだけは言えます。何よりも従業員の幸せを第一に考えられるのは、彼の生きざまなのです」

 

すると、会場からは割れんばかりの拍手が起こりました。とうとう話し終えると会場からはスタンディングオベーションで地鳴りのような拍手を受けたのです。

スタンディングオベーションなんて初めての経験です。このとき、つま先から頭のてっぺんにまで一気に電流が走ったのを覚えています。

(感動は持続し、次に韓国の済州島まで呼ばれてお話をしてきました。今度は日本で受講された人を含め観客は750名までふくれあがっていました)

 

乾いた砂が水を飲みこむように求めたもの

 

私も感動のバイブレーションに共鳴しました。感動とともに腹の底で納得するものがありました。

韓国の美容室経営者は、明日は潰れるかもしれないというぎりぎりの瀬戸際に立たされてはいても、彼らが乾いた砂が水を飲みこむように欲していたのは、すぐに儲かる話じゃなくて、経営者としてどのように店を生き返らせることができるのか、それは自分自身の生き方次第である、そんな経営にとって一番大切な話(つまり原理原則)を求めていた、ということです。

 

ひるがえって日本の経営者はどうでしょうか? 

生きざま、理念、ミッションの話は無関心で、ただひたすら儲け話を求める。数百回講演をしてきての実感です。いまも事情は大差ありません。それどころか、経営状態が逼迫(ひっぱく)すればするほど、すぐ儲かる話に飛びつく。

 

だからでしょう、空前絶後の危機を乗り越えた韓国の経営者は強い。日本に学ぶものは化粧品の新商材くらいで、経営として学ぶものは皆無であると。もっと極端に言えば、日本の美容室経営者は二流、三流とのレッテルを貼って見下しています。これが偽らざる韓国の日本美容業への評価です。

 

いいですか、ミッション、ビジョンを掲げること、お客を知ること、これは経営の原理原則」で最重要なことなのです。あなたはミッション、ビジョンを掲げていますか? 掲げているとして末端のスタッフまで浸透していますか? ミッション、ビジョンは全スタッフの骨の髄まで浸透していますか?

 

ミッション、ビジョンがあるなら、それを基にして戦略を策定していますか? 価値観の合わないものは排除していますか? 目先の売上にこだわって価値観に合わなくても受け入れているなんてことはないですか?

 

あなたはお客様のことを知っていますか? 売上の7~8割をもたらしてくれる2~3割の上位のお客様があなたのお店を支持している理由を熟知していますか? そのお客様に今度はヘアスタイルや商材を含めてシミュレーションし、具体的な提案をしていますか? 提案する習慣ができていますか?

 

リピートビジネスの原理原則

 

理美容業こそ典型的なリピートビジネスです。リピート率を高い確率で実現するには、もっと真剣にお客様と向き合うしかありません。すでにお客様は掃いて棄てるほどいないのです。それは幸せな人口増加時代のマスマーケットで通じた手法です(人口減少時代に新規集客ばかりのサイトが大儲けしていること自体が異常です)。今はザルで水をすくうのではなく、鉄鍋で汲んだ水を流出させないことなのです。

 

こういった経営の原理原則をないがしろにして、目先の安易な人気商品や技術メニューを追いかけることに汲々(きゅうきゅう)としている。そんな本末転倒の業界だからこそ、すぐにでも他店がキャッチアップできるモノやサービスや情報に振り回され、レッドオーシャンの海に溺れるのです。儲かるのはメーカーやディーラーだけ。経営不振の原因はおしなべて本末転倒にあり。つくづくそう思います。

 

これで「美容室経営5つのNG」の連載を終わります。ところどころ過激な表現があったかもしれませんが、読者であるあなたに奮起を促すエールの言葉と受け止めていただければ幸いです。

 

私は事業に失敗した人間です。だからこそ、こうやれば絶対失敗しないという、身をもって知った体験から言葉の数々を発信します。失敗した人間の言うことなんて信用できない。それはそれ、そう判断されても致し方ありません。しかし、失敗から学ぶことは成功から学ぶよりも貴重で得るものは大きいと言います。

そんな理由から、お前の話を聞きたいと思われる方だけに発信しています。目障りでしたら私の情報を遮断してください。

「それでもいいよ」という圧倒的少数の方だけに、こりずに発信していきます。

 

ミッション・ビジョン・戦略・戦術の一貫性 

 

ともかく、美容業は、理容業も含めて貸借対照表の「資産」をたくさんもっています。その資産とは「お客様」のことです。数字に表せない資産で、もちろん貸借対照表にも記載されていません。

 

しかし確実に目に見えないお客様という資産を豊かに持っているのです。しかも重ねたコミュニケーションの量と質に応じて、お客様の情報は深く蓄積できるという、異業種がうらやむほど資産の価値を何倍、何十倍にもできる特権を有しています。

 

お客様のことを知る、知ったら活かす。これがリピートビジネスの原理原則です。

 

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・あなたのお店の存在理由は何か?(ミッション)

・あなたのお店は今後どうしたいのか?(ビジョン)

・ミッション・ビジョンを実現するために、どうやるのか?(ストラテジー:戦略)

・ミッション・ビジョンに相応しい、あなたの顧客とは誰か?

・その顧客に向けて何を提案できるのか、提案し続けられるのか?

・戦略を実現するための戦術は何か? 戦術はミッション・ビジョン・戦略とブレがないか?

 

顧客を抱えているという最大のチャンスを持っているのが美容業です。チャンスをぜひ十分に活かしてほしい。そう思う気持ちが先走ってしまっての過激な発言であったと理解していただければと願いつつ、キーボードから離れます。

 

厳しい経営環境のもとでこそ

商売の原理原則を1つひとつ

着実に実践していくことが

求められる。

松下幸之助

 

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初出掲載:2020 年3 月19 日