窮したときに涙する先賢の言葉
無策が招くコロナ禍の窮状
物事は順調に行くことはまれです。大抵は日々発生する問題に取り囲まれています。生きることであれ、事業をやっていることであれ、同じです。
「人の一生は重い荷を負うて行くが如し」
とは徳川家康の名言です。
なかでも大きな問題が今、起こっています。
申し上げるまでもなく“コロナ禍”という大問題です。
ワクチン頼みの政権ですが、その肝心のワクチンの供給が間に合わない。たとえ間に合ったとしてもコロナの変異株には効力が期待できないとか、3回摂取が必要だとか、だいいち接種後の副反応が心配だとか、接種後の死亡例が無視できない多さに及んでいるとか、まったく対策もメディアの情報もアテにならず迷走を繰り返しています。
にもかかわらず、見切り発車のオリ・パラ開催で、選手村からとうとうクラスターが発生してしまいましたね。
無策の極めつけは入院制限。中等症の人は自宅療養って、空いた口がふさがりません。中等症って呼吸困難状態にある人のことで、これじゃ国民を見殺しにすることに変わりがないのでは?
事実、PCR陽性者(感染者ではありません!)は異常な増え方で、政府は、あいかわらずの経済活動を犠牲にした緊急事態宣言やまん延防止策を発令するのみで、補償はまったくありません。考えてもいないようです。
国民を見殺しにするどころか、中小企業潰しの現政権と批判されても仕方がないでしょう。事実、菅内閣の政策ブレーンはデービッド・アトキンソン氏と竹中平蔵氏で、日本企業の生産性の低さは圧倒的多数を占める中小企業に起因している、だから中小企業は淘汰されるべきだ、というのが両氏の持論です。
だから中小企業の窮状になんの手も打たず、潰れるものは潰れてしまえというのが政府のホンネなのですね。
キング牧師の言葉
政策批判は本題ではありませんので、この辺でやめておきます。
ただし、アメリカの公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師の言葉、
「最大の悲劇は、悪人の暴力ではなく、善人の沈黙である。沈黙は、暴力の陰に隠れた同罪者である。」
ということなので、こういう貴重なブログというメディアを持っている限りは、言うべきことは言おうと思うのですね。
生死一如
さて本題。このように、コロナ禍を代表とする大きな問題の渦中にあるわけです。
そこで、こんなときこそ先賢と言われる先人の哲人・賢人に学ぼうというのが今回のブログのテーマです。
仏教には「生死一如(しょうじいちにょ)」という言葉があります。
生と死は表裏一体だというわけですね。
だから、より良く死ぬとは、より良く生きることだと。
死に臨んでの最大の後悔は、人生にチャレンジしなかったことだと、終末医療に携わった医師は言います。
こうなると、人生の最大の後悔です。より良く生きてはこなかった‥。
そして、チャレンジした人だからこそやってくる幾多の試練。
時には、もうだめかもしれないと打ちのめされるほどの。
変ずれば通ず
しかし『易経』にはこう書かれます。
「窮すれば則(すなわ)ち変ず、変ずれば則ち通ず」
苦しんで苦しんで進退窮まるほど追いつめられたときに、今までのやり方・考え方を根本から変えてみる。いや、変えるしか手はない。そして変えてみれば、まったく新しい発想でのやり方・考え方が思いつき、ビジネスに応用すれば新たなビジネスモデルの確立ができて、次の繁栄の原動力になる。
原動力になるどころか業界のスタンダードにもなっていく。
そんな意味合いです。
2500年の時を隔ててドラッカーはまったく同じことを言っています。
「世の中の認識が、『コップに水が半分残っている』から『半分空である』に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる。」
進退窮まった人、真っ当な危機意識を持つ人にこそイノベーションの機会がやってくる、反対に、現状維持に甘んじている人にはイノベーションの機会は永遠に訪れることはないのでしょう。なぜなら、“コップに半分残っている”ことで安心してしまうからです。
資本主義の発展には絶えることのないイノベーションの繰り返しが欠かせないのですね。
なぜなら宇宙の絶対法則とは、絶えず変化してやまないことにあるからです(諸行無常)。
どう生きるかを選ぶ
そしてもうひとつ、私の大好きなジョーン・バエズの言葉。
「You don’t get to choose how you’re going to die or when.
You only get to choose how you’re going to live.」
―いつ、どのように死ぬかは選べない。
どう生きるかを選べるだけである。―
まさに「宿命」と「運命」の違いを端的に指摘して、宿命に負けてはいけない、運命を好転させるのはあなた自身だと鼓舞しているのです。
さらにおまけの汽車ポッポ。
「未来は、いくつもの名前を持っている。
弱き者には『不可能』という名。
卑怯者には『わからない』という名。
そして勇者と哲人には『理想』という名である。」
危機こそチャンス!
たとえ状況は窮するようであったとしても、あなたは勇者であり哲人です。
さらに組織をまとめる君子でもあります。
そんな人こそ、変革者であり、時代を担うに足るチェンジリーダーその人であるのです。
「危機」という字は、危険と機会(チャンス)が背中合わせの状態を表しています。まさに「危機こそチャンス」なのです。
この千載一遇とも思えるほどの滅多ないチャンスをぜひわがものとしていただきたいと思うのですね。
【広告コピーライティング講座】 その1「韻を踏む」
感染源は言葉
世が世です。カミュの『ペスト』が売れているようですね。
しかしペストの主題は病原菌ではありません。
「言葉」・・その感染力はすさまじい。
言葉こそ病原菌以上の感染源であると著者はいうわけです。
「ペンは剣よりも強し」
「はじめに言葉ありき」
「言葉は言霊」
・・・・・・・・・
ということで、人を生かしもし殺しもする圧倒的な力を持っている「言葉」。
ネットやSNSなどツールはどんどん進化し多様化していますが、そんなときこそ「言葉」で圧倒的に差をつける。言葉にまさるものはありません。
そんなパワーのある言葉を世の中は求めています。
言葉を使いこなして“お客様のこころをわしづかみ”
広告コピーとして、「おおいに」「応用」して「みよう」(と今回のテーマである「韻を踏む」を実行しています)ではありませんか。
テクニック「韻を踏む」
記念すべき今回は第1話として「韻を踏む」。
(以後、何回かにわたってコピーライティング講座を開講していきます。)
同じ言葉や、同じ母音や母音を持つ言葉をくりかえし使うことによって、独得のリズム感が生まれ、いったん目にする(というより耳にする)と、頭にこびりついて離れません。
そんな魔法のような、言葉のテクニックが「韻を踏む」です。
まず例を挙げます。
トントントントン ヒノノニトン(CM)
ソーリー ソーリー ヒゲソーリー
アイアムソーリー ヒゲソーリー
ウワサの床屋 裏ドーリー
(別バージョン)
アイアムソーリー ヒゲソーリー
マスク配るの 安倍ソーリー
・・どうですか、一度目にしたら(いや、耳にしたら)忘れられないですよね。
ダジャレ感が過ぎるというのであれば、ちょっと格調高く文学的にもやってみましょう。
格調高く韻を踏む
「人間が人間として生きている
ブドウがブドウの木であるように」
「ゆりかもめゆるゆる走る週末を
漂っているただ酔っている」
(以上、俵万智)
独得の言語観とリズムが押し寄せてきて、快感に震えます。
こういうのもあります。
「かくすればかくなるものと知りながら
やむにやまれぬ大和魂」
(吉田松陰)
これだけ何度も韻を踏んだ表現であるだけに、作者の想いが倍増して重く圧しかかります。作者の覚悟に圧し潰されてしまいそうです。
そういえば冒頭にあげたカミュの別の小説『異邦人』では、主人公の名はムルソーMeursault。「死ぬ」meursと「太陽」soleilを組み合わせた韻を踏むというネタばらしがあります。
広告コピーへ応用する
さて、本題はここからです。
そんな強烈な効果のある「韻を踏む」コピーを考えてみましょう!
「トレンドにあなたらしさをブレンド」
―「トレンド」と「ブレンド」で韻を踏んでいます。
「個性ひきたつヘアスタイルで、あなたのライフスタイルきわだつ」
―「ヘアスタイル」と「ライフスタイル」に加えて「ひきたつ」と「きわだつ」も欲張って使用。
お使いになるのは自由です。お店の個性に合わせてアレンジしてみてください。
ただ、無意味なダジャレはかえって薄っぺらに思われてしまいます。
また、せっかくのリズム感が失われてもいけません。
要注意です!
やはりプロの手を借りたい。そう思われる方は私宛メールください。
下に掲げたのは天才詩人と言われた中原中也の詩です。いったいいくつの言葉が韻を踏んで使用されているか、見つけてください。
これだけ韻を踏む表現にふれていると、どんどん人や物や音が増殖・増幅するイメージで圧倒され、強く印象に残ります。
「あゝ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
月給取の午休み、ぶらりぶらりと手を振って
あとからあとから出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちやな小ッちやな出入口
空はひろびろ薄雲り、薄雲り、埃りも少々立つてゐる
ひよんな眼付で見上げても、眼を落しても……
なんのおのれが櫻かな、櫻かな櫻かな
あゝ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ、出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちやな小ッちやな出入口
空吹く風にサイレンは、響き響きてきえてゆくかな」
(中原中也「正午」丸ビル風景)
器量と度量
器量と度量の違い
リーダーシップの資質を云々する場合、「器量」と「度量」という言い方があります。
「器量」とは、仕事における対処能力のことであり、「度量」とは、他人からの批判でも、他人の失敗でも、受け入れる心の広さのことです。
陰陽で考えると、陽の力が器量、陰の力が度量です。
さて、リーダーに相応しいのはどちらの資質かというと、そうです、度量です。
器量優先で会社のトップになったり、組織の長となったりすると、自分自身、仕事ができるだけに、できない人を見るととても我慢がならなくなります。こんなこともできないのかと、できない人を軽蔑します。それが大きな威圧感となっていきます。
そんなリーダーには人がついていけず、人心が離れていってしまいます。
「名選手、必ずしも名監督ならず」とプロ野球で言われているようですが、典型的な例でしょうね。
一方の度量です。
人の能力を活かし、人を育てるのは度量です。
リーダーは、度量という陰の力を育てることにおろそかであってはなりません。
人間一人の力には限りがあります。人間一人の能力ではたいしたことはできません。衆知を集め人の力を活かすという謙虚な姿勢でマネジメントする力が欠かせないのです。つまり、度量の人が必要なのです。
有名な項羽と劉邦。
器量にまさっていた項羽(こうう)は度量にまさっていた劉邦(りゅうほう)に最後には負けてしまいます。
項羽はまさに鬼神のような武勇で連戦連勝する戦の天才。一方の劉邦は、戦の才はまったくなくてもおおらかな人柄で推戴されて漢帝国を興すことになる度量の人です。
仕事のできる人の問題点
能力主義や実績主義を重要視するあまり、仕事のできる人をセクションの長(たとえば店長や人の上に立つ役職)に据えると問題が発生します。
私の経験から申し上げて、そういう例には残念ながら多く出くわします。
多店舗展開している会社のある店長のいる支店では、際立ってスタッフの離職が絶えないということがありました。
社長、そしてその店のスタッフへの聞き取り調査をしました。なんでもその店長は部下の失敗は許さず、かける言葉はきつくなる。時として、本人にそんなつもりはないのでしょうが、人格否定にも等しい言葉を吐いてしまう。
よく吐かれる言葉が「こんなこともできないのか、美容師失格!」です。
これでは労働審判に訴えられでもしたら、パワハラ、モラハラで100%敗訴でしょう。
原因は、仕事ができるという器量を優先した店長職への人事とわかり、社長の了解を得て、説得の上、技術職のトップとして相応しい名誉の役職を与えて店長から降りてもらいました。
後任に据えたのは、仕事の成果はそれほどでなくても、度量が大変まさった人です。
そのお店はそれ以来、離職するスタッフは出ることがなくなりました。
誰を登用するか?!
成果主義が言われ、成果主義人事が横行すると、同種の問題が発生します。ことに最近、経営的に余裕がなくなっているせいでしょうか、同じような例が多くなっている気がします。
つまり、器量よしの才人を登用するのではなく、才よりも徳の優れた人、つまり君子を登用することに尽きるのですね。それが組織マネジメントの要諦です。
「才徳全尽(さいとくぜんじん)、之(これ)を聖人といい、才徳兼亡(さいとくけんぼう)、之を愚人という。徳、才に勝つ、之を君子といい、才、徳に勝つ、之を小人という。凡(およ)そ人を取るの術、苟(いやしく)も聖人君子を得て之に与(くみ)せずんば、その小人を得んよりは愚人を得んに若(し)かず。」
―才と徳が完全なる調和をもって大きな発達をしているのが聖人である。反対に、これが貧弱なのが愚人である。およそ才が徳に勝てる者は小人といい、これに反して、徳が才にすぐれている者は君子という。
人を採用するとき(あるいは登用するとき)は、絶対的に君子を採って、小人を排すること。小人を採るのであれば、むしろ才のない愚人を採るほうがよい。
【経営の原理原則】シリーズ㊷~㊺+番外編(最終回)
5つある利益
【経営の原理原則】その42
「5つの利益と営業利益の重要性」
決算書の損益計算書(P/L)には5つの利益が記されています。
・売上総利益(粗利益)
・営業利益
・経常利益
・税引前利益
・税引後利益
どれも重要な項目です。内容をきちんと把握できていなければなりません。この5つの利益のそれぞれをしっかり把握することが原理原則というわけですが、今回はこれの発展形で。
あえてこの5つの利益のなかで最重要な利益とはなんですか?と問われたら、あなたはなんと答えますか。
銀行に印象を良く見せるのは経常利益だから、経常利益が最も重要と答える人もいるでしょう。
いや、税金をできるだけ少なくしたいので、税引前利益とお答えになるでしょうか。
ここ数年、会社の業績評価として一番の重要な項目は「営業利益」なのですね。
確かに従来は「経常利益最強論」がまかり通っていましたが、さまざまな弊害が露呈したようです。
営業利益はそこそこにして、雑収入にたとえば保険の解約金などを突っ込んで経常利益を膨らませるなんてやりかたが、まったく評価されなくなったのですね。
その企業の本当の実力、つまり1年間、いかに本業で稼ぎ出したのかがモノを言う、そんな評価になったのです。
お気をつけください。今後の決算書の作り替えのご参考までに。
確実な未来予測
【経営の原理原則】その43
「人口構造の変化はすでに起こった未来」
ドラッカーがその著『イノベーションと企業家精神』のなかで、「イノベーションのための7つの機会」としてその5番目に挙げているのが、「人口構造の変化」なのです。
ドラッカーは「人口構造の変化ほど明白なものはない」として、少し長いですが、そのまま引用します。
「アメリカの10代の女性は安い靴をたくさん買う。基準となるのは、耐久性ではなくファッション性である。この同じ女性が10年後にはあまり靴を買わなくなる。17歳ごろの2割程度に減る。ファッション性は重要ではなくなり、履き心地や耐久性が基準になる。
先進国では、60代、70代の退職後間もない人たちが、旅行や保養の市場において中心的な世代となる。ところが10年後には、この同じ人たちが高齢者コミュニティの客となる。
共働き夫婦には金はあるが時間がない。彼らはそのような人間として消費する。また、若いときに高等教育、特に高度の技術教育を受けた人たちは、卒業の10年後20年後には、高度の再教育コースの受講者になる。
欧米や日本などの先進国はオートメ化せざるを得ない。少子化と教育水準の向上という人口構造の変化だけを見ても、先進国の製造業における伝統的なブルーカラーの雇用が減少することはほぼ間違いない。」
このように人口構造の変化は「すでに起こった未来」なのですね。近未来がどうなるかは容易に、しかも精度が高く予測できることなのです。
ところが現実には違うとドラッカーは言います。
「このような人口構造の変化が、企業家にとって実りあるイノベーションの機会となるのは、ひとえに既存の企業や公的機関の多くが、それを無視してくれるからである。彼らが、人口構造の変化は起こらないもの、あるいは急速には起こらないものであるとの仮定にしがみついているからである。まったくのところ、彼らは人口構造の変化を示す明らかな証拠さえ認めようとしない。」
本当にその通りですね。人口構造の変化を無視した政治や行政のせいで、年金をお年寄りに大盤振る舞い。豪華な保養所の建設に湯水のごとくお金を使いました。そして結果は、積み立てた年金の枯渇、高齢者と若者の年金受給の不公平を生み出し、年金そのものも破たんに瀕しています。
業界に限って見てみても、加速化する少子化の流れを無視して美容学校の設立ラッシュをした結果、定員割れが続出しています。一方では、人口減少は着実に進展しているにもかかわらず、美容室の新規乱立で顧客数を獲得できず、おまけに圧倒的な売り手市場になった美容師採用が困難を極めています。
すでに日本人の平均年齢は49歳です。世界一の高齢です。これもすでに起こった未来でわかっていたことです。顧客の半分を占める49歳以上の女性を対象に、49歳以上の特有の「お悩み」解決に向けて解決策を提示する、そんな選ばれる美容室づくりをやって来ましたか?
このように、人口構造の変化は近未来予測としては、すでに起こった未来のように確実に把握できるものです。気づいたときには変化に翻弄されるという受動的な姿勢では取り残されます。お店の存続そのものが危うくなります。
もうひとつ、コロナ禍によってますます進む分断化、非人間化、孤独化、デジタル化のなかで、あなたはどこに目を向け、どうやってビジネスを発展させていけばいいとお考えですか?
長く存続する誓い
【経営の原理原則】その44
「企業はゴーイングコンサーン」
ゴーイングコンサーン(Going Concern)は「継続企業の前提」とも呼ばれ、企業が将来にわたり存続し、事業を継続していくという前提のことを言います。
財務諸表を作成するうえにおいての前提条件でもあり、株式が公開されている企業には、企業存続の前提に重要な疑義をいだかせる事象や状況が発生すれば、しっかりとその旨を「重要事象」として明記しておかなければなりません。田谷さんの場合は、残念ながらこの重要事象が明記されたままの状態です。
つまり、会社を立ち上げた限りは、企業を永遠に存続させます、という誓いの言葉がこのゴーイングコンサーンです。結婚式で結ばれた男女が、この愛を永遠に誓いますと宣誓するのと一緒です。
一度会社を創った限りは永遠に存続させたい。創業経営者なら誰でも思うことです。
しかし現実には、企業存続30年説、短い場合は10年説と言われるように企業の寿命は短いですね。
東京商工リサーチの調査によると、2020年に倒産した企業の平均寿命は23.3年だそうです。
また帝国データバンクの発表によると、100年継続する企業はたった2%だそうです。
だいたい、ゴーイングコンサーンを誓っても、志半ばで、刀折れ矢尽きて20年程度で倒産していくというのが実態のようです。
倒産の原因は、ほとんどが「販売不振」です。販売不振を引き起こした要因として、過当競争、消費税増税や今回のコロナ禍のように外部環境の変化と、後継者不在も含めたマンパワー不足といった内部要因があげられます。
と、外野席でああだこうだと訳知り顔で言っていても始まりません。
もう一度、ここで原点に立ち帰って、5年後、10年後の事業をどうしたいのか。自社が存続する社会的な意義と存在理由はなんなのか。それらのミッションとビジョンに立ち帰っていただきたいのです。
なるほど、自社と自社の事業がなければ地域社会にとっての大きな損失だ、もっともっと社会に貢献して、5年後はこうなってみせる、10年後はこうだ!
そんなミッションとビジョンの再確認をして、腹の底にズシリと収めていただきたい。
そして、さぁ、明日から具体的に何をやるのか、スタッフとともに目標設定して行動へと落とし込んでいってほしいのです。
そう、ゴーイングコンサーンをめざして。
デジタルの次に来るもの
【経営の原理原則】その45
「アナログな人間関係の深化」
気の利いた経営手法でもありません。最新のマーケティングテクニックでもありません。
規模の大小も、資本力の強弱も、まったく関係ありません。
最終的にモノを言うのは「人間力」です。
デジタルではなく、アナログの人間くささです。
デジタル化が進展し、このコロナ禍での非接触化、リモート化に象徴されるように、人間対人間のダイレクトな交感がどんどん希薄化してくると、逆に人間同士の触れ合いがとても貴重になってきます。
近未来予測において、信頼すべき哲学者や思想家がおしなべて強調しているのが、アナログな人間関係の復活です。
なかでも、いま世界で最も注目されている新進気鋭の哲学者であるマルクス・ガブリエルはアフターコロナの世界において、大変興味深いことを言っています。
●グローバル化が民主主義の危機を引き起こしたとして、ローカルでしかもバーチャルな形ではない協力体制の構築が真の民主主義を生み出す。
●デジタル革命の後には、お互いがそばにいてリアルな関係性を構築するアナログ革命が起こる。
●「善」のビジョンを掲げた、道徳を中心にした新しい啓蒙主義の哲学が必要になる。
というようにアフターコロナ後の世界の在り様を述べています。なにもアフターコロナ後だからと先送りしていいわけではありません。おそらくすぐに来るであろうアフターコロナにそなえて、今から準備しておくのが賢明です。
マルクス・ガブリエルは哲学者らしく、難しい言葉で述べていますが、理美容業界流に翻訳して記せば、このようなことになるのです。
結論から申し上げれば、これは理美容業の豊かな未来を語っていることに等しいのですね。
なぜなら、デジタル後のアナログなコミュニケーションによって、ズタズタに引き裂かれてしまったかもしれない人間関係を真に豊かなものにしてくれる。ということは、民主主義の復活を意味しているということです。その担い手が理美容室だと解釈できるわけです。
しかもローカルな協力体制において、です。ローカルもローカル、地域密着の業態特性から言って、理美容業のことにほかならないのです。
さらに「善」のビジョンを掲げた新しい啓蒙主義を実践しているのは理美容業であり、まさにズダズダに引き裂かれてしまった、一人ひとり「個」の顧客を大事にして、‟そのまま・あるがまま“を受け入れ、尊厳と人間性回復を担う最前線に位置する理美容業の豊かな可能性を予測していることになりますよね。
デジタルでは決して得られないアナログによる人間関係の深さと可能性。
この可能性を徹底深化・発展させようじゃありませんか!
おまけの番外編
【経営の原理原則】番外編
「墓碑銘になんと刻むか?」
【経営の原理原則】シリーズは45回で終了といたします。
さらにその番外編として、どうしてもお話しておきたかったのがこのテーマです。
「墓碑銘に刻む言葉」――。
個人の人生の集大成となる言葉。自分が生きた証となる言葉。人生一回限り、この言葉に1ミリの嘘もないというぎりぎりの言葉。
この言葉通りに生きることを、その人のかけがえのない、価値ある人生というのでしょうね。
つまり、墓碑銘に刻む言葉をいったん決めてしまえば、その決めた通りの人生を歩むという、真っ直ぐに背骨の通った生き方ができるわけです。
先人の墓碑銘を見てみましょう。
「生きた、書いた、恋した」
(スタンダール:世界的な小説家。まさに『恋愛論』『赤と黒』の名作を生んだ人に相応しい言葉ですね)
「科学への献身を通じ、人類のために生き、人類のために死せり」
(野口英世:一生を科学に殉じた生き様の言葉です)
「己より賢明なる人物を身近に集める術を修めし者ここに眠る」
(カーネギー:鉄鋼王としてその事業の成功には多くの才能豊かな人材を身近に置いていました。そして才能が豊かなだけに組織がバラバラになりかねないのを、見事にマネジメントによって統制したのがカーネギーです)
そして、日本人には墓碑銘よりもなじみの深い辞世の句、あるいは辞世の言葉。
「昨日の発句は今日の辞世、今日の発句は明日の辞世。
我、生涯に言い棄てし句々、一句とて辞世ならざるはなし。」
(松尾芭蕉)
―さすが俳聖といわれた芭蕉の言葉です。死に際に臨んで弟子から辞世の句を望まれたときに語った言葉です。「昨日の発句は今日の辞世の句、今日の発句は明日の辞世の句。私は生涯、辞世の句との覚悟で発句しなかったことは一句たりともなかった」と。凄い言葉です。
「天が私にあと十年の時を、いや五年の命を与えてくれるのなら、本当の絵描きになってみせるものを。」
(葛飾北斎)
―あの富嶽三十六景で世界的に知られる北斎。まだまだ描き足らない、本当の絵描きになっていない。いま死んだとしたら画家として大成がならないと思い込んだその執念。凄まじいものがあります。
あなたはどんな墓碑銘の言葉を刻みたいですか?
刻むべき文字に相応しい人生の終章が訪れる時=死から逆算していって、さて、今の生き様はどうなのでしょう? 墓碑銘通りの人生を送っていますか?
【経営の原理原則】シリーズは45回と番外編をもって、今回で一応終了とさせていただきます。まだまだ書き足りないことがあります。重要なことには変わりない原理原則はあと30回分はネタとしてあります。
結構気合を入れて書きました。でも、この辺でやめておきます。このような原理原則は頭で理解したとしても、実践で活かさなければ何の成果も生まないからです。数多くご紹介すればするほど、実践で落とし込むのはわずらわしさを感じてしまうでしょう。できれば言い出しっぺの私が伴走者となって一緒に走っていければいいのでしょうが、それも許されません。
一緒に走ってみたいと思われる方は、このたび勉強会を立ち上げましたのでこちらにご参加ください。「オンライン経営勉強会[未来創造]」といいます。
何もかもが変化が急で、また変化の揺れ幅が大きすぎます。
だからといって目先の、一見効果がすぐにでも出るようなテクニックやハウツーに飛びついてはいけません。こういうときこそ原点に、そう、原理原則に立ち帰ってみることの重要性をこのシリーズで訴えてみたのです。長い間お読みいただき大変ありがとうございました。
「一本のろうそくは何千本ものろうそくに火を灯すことができる。幸福もわかちあうことで減ることはない。」
(ブッダ)
とうとう2兆円の大台を割り込んだ市場規模 今後は一気に廃業の動き?
理美容2020年の市場規模
矢野経済研究所の「理美容市場規模推移と予測」データを紹介します。
だいたい業界で発表される統計データほど当てにならないものはありません。たとえば厚労省で発表される全国の店舗数ですが、かさ上げされた数字のままで、実態を反映していません。なぜなら廃業届がカウントされていないからです。廃業届は厚労省(保健所)に届け出ずに税務署に届けます。それが現状。
ただ数少ない信頼性の高いものとして、この矢野経済研究所の調査は評価できます。
その「理美容市場規模の推移と予測:2019年度」を振り返ってみます。2019年度の市場規模、つまり理容室と美容室とで一昨年の2019年度はどれだけ売上げたのかというデータです。
過去5年間で500億円の市場が消滅
結論から申し上げれば、2019年度の理美容市場は、売上高ベースで2兆1253億円、前年対比で99.4%でした。0.6%の減少ということは、129億円の売上減少という大幅な落ち込みとなったということです。
美容業は81億円の売上減で99.5%、理容業は48億円の売上減で99.2%です。
ちなみに過去5年間の売上高推移を見てみましょう。※( )内は前年との増減。
・2019年度:2兆1253億円(-129億円)
・2018年度:2兆1382億円(-92億円)
・2017年度:2兆1474億円(-101億円)
・2016年度:2兆1575億円(-83億円)
・2015年度:2兆1658億円(-97億円)
なんと、502億円が過去の5年間で失われた理美容室の売上高です。
この失われた理美容室の売上がそっくりそのまま集客のポータルサイトに奪われてしまったという見方もできます。アホらしい限りですが。
(もちろん実質値下げのクーポン乱発で客単価減に見舞われ、売上を減少させていったというのが真っ当な分析ですが。)
そして、2019年度は、年末の消費税増税がありましたが、明らかにその影響は見て取れます。それで129億円の減。
数字だけ述べても実感がわかないかもしれませんが、129億円の減少ということは、年間売上高1000万円クラスのお店が1290店舗消えてなくなったということです。500億円なら5000店舗がこの5年間で市場撤退してしまったに等しいのですね。
予想を超えた結果
同調査レポートは2020年の売上予測を2兆1052億円として2019年度より200億円の売上減と予測を立てていましたが、はたしてどうだったでしょうか。私はブログで予測は甘いと書きました。ひょっとすると、2兆円の大台を割るかもしれないと予想しました。(2019年の理美容室の売上高は129億円の大幅減少)
フタを開けてみると――、本当にその通りになってしまいました。
さてこの度、2020年度の理美容の市場規模が発表になったのです。
なんと、とうとう2兆円の大台を割り込んで1兆9700億円となってしまったのです。しかも前回の同調査で予測したのは200億円の減少でしたが、それを8倍近くも悪化して1553億円の減少に見舞われてしまったのですね。
この2020年度を加えれば、過去6年間で502億円+1553億円=2055億円もの市場が失われてしまったのです。年間売上高1000万円クラスの店が2万店舗も消えてしまったことに等しいのです。
しかしながら同レポートでは、今後の見通しとして、「新型コロナウイルス感染症の影響に関しては、2020年よりは若干でも改善することを前提とし、Withコロナ時代に即したサロン経営が定着すると見られることから、2021年度の理美容市場規模は、事業者売上高ベースで2兆1,052億円(前年度比106.9%)、このうち理容市場が6,232億円(同105.8%)、美容市場が1兆4,820億円(同107.3%)になると予測する。」としています。
つまり売上は2兆円の大台を回復するということです。
一気に加速する廃業への動き
しかし、私はそんな楽観論には立ちません。
ここでモノを言うのは「編集者の眼」です。表面的な現象を結び付けて背後にひそむ構造を分析するという、職業的習い性である編集者の眼から推測するのですね。(と言っても、すべての編集者がそういう眼を持ち合わせているのではなく、名誉のために申し上げたいのですが、ごく一部です)
同レポートでも言っていますが、国内理美容市場は、少子高齢化の進行と出生率低下などによる人口減少で、市場規模は縮小が続く見通しである、という大きなトレンドが前提としてあるということ。
しかし、そればかりではないのです。
以上の大きなトレンドと同時に、経営者の高齢化(60歳代以上が過半数)、後継者の不在(後継者なしが8割)という内部環境要因が加わります。さらに、コロナ禍の売上減少という急激な外部環境要因の変化が重なるのです。
結果、経営者マインドは極端に落ち込み、今後は一気に廃業、あるいはM&Aという選択肢が増えてくる。
そういうふうに編集者の眼が語りかけてくるのです。
「死ぬのは決まっているのだから、朗らかにやっていこう。時間は限られているのだから、チャンスは今だ。」(ニーチェ)
【経営の原理原則】シリーズ㊵~㊶
あなたのお店の価値とは何か
【経営の原理原則】その40
「価格を下げるのではなく、価値を上げる」
これも原理原則中の原理原則です。
でも、アタマでは理解できるが、実行するとなると難しい。その辺が多くの声でしょうか。
ここで鉄板の価値を上げる方策をお話します。
その前に、上げるべき価値とは、どういうことを意味しているのでしょうか。
そして、あなたの最大の価値というべき‟ウリ“はなんでしょうか。
答えは「お客様に聞け」です。
できれば、あなたのお店の売上や利益の70~80%をもたらしてくれている上位20%のお客様に聞くことです。
「当店のお気に入りポイント」を聞くこと。(直接聞くのは抵抗があるという場合は、質問用紙のテンプレートがあります。以前、Facebookの「MASAサロン経営研究所」のページでお話したら大きな反響をいただきました。希望者にはテンプレート発送済みで、今回はやりません。またお客様の意見の集約方法もこのブログで何回かご紹介済みですので繰り返しません)
そこが、あなたのお店の「強み」の宝庫、つまりウリなのです。
ライバル店では提供することができない最大の「価値」です。
これを徹底的に深堀して、ライバル店が逆立ちしたって勝負にならないくらいの地点に位置を占めること(ポジショニング)。
これが価値を上げる鉄板のやり方です。
お客様のことならわかっているよという傲慢な姿勢ではいけません。
「あなたは顧客のことがわかっていないと考え、行動しなさい。」
上位のお客様に謙虚に耳を傾けることができれば、あなたのお店が進むべき正しい方向に導いてくれるはずです。
ROIとは?
【経営の原理原則】その41
「開業費を回収するROIという指標」
ROI(アールオーアイ、ロイ)とはReturn of Investmentのそれぞれ頭文字を取ったもので「投資回収率」「投下資本利益率」を表します。
お店の開業時、あるいは支店開設時に使用した費用に対し、それを何年で回収できるかを明らかにした数字です。
ROIの計算方法は、1年間の営業利益を開業費で割って算出します。
たとえば、開業費が2000万円で、年間の営業利益が400万円の場合、
(営業利益)400万円÷(開業費)2000万円×100(%)=(ROI)20%
開業費の回収期間は、100(%)÷20(%)=5
つまり、開業費の2000万円は「5年で元が取れる(回収できる)」ということです。
ですから、この5年の期間をもっと短くしようと思ったら、開業費をなるべく安く抑えるか、営業利益をなるべく多くするか、です。
逆の場合もそうです。
開業費が多くなり、営業利益が少なくなれば、回収期間がそれだけ長くなります。これでは経営は安定しません。次の展開(さらなる支店開設など)を考えたとしても、金融機関は融資に前向きにはなりません。過大な開業資金で潰れてしまった美容室の例を私は多く知っています。まさに無謀な出店です。こんなことを繰り返さないように。
目標数値がはっきりする
さて、もっと「ROI」の中身を見てみましょう。
開業費2000万円の場合、それを5年で回収する計画ならば、400万円の営業利益が必要になります。
ここで営業利益率を10%と仮定すると、年間の売上高は4000万円必要になるということです。
では、4000万円の売上を実現するために、月ベースに直すと
4000万円÷12カ月=333万円
333万円の売上を見込むために、単価が7000円とすると、
333万円÷7000円=476人
つまり476人の客数が必要になります。
さらに、3カ月に1回の来店サイクルとして、
476人×3カ月=1428人
つまり、開業後3カ月間で1428人の総客数を確保しなければなりません。
そのための集客方法はどうする? 必要スタッフ数は何人が最適か?
そんなことを、できるだけ詳細にシミュレーションしてみることです。
異業種の例
ここで業種の例を取り上げます。
さすがにコロナ禍の影響はあったとはいえ、それまでの好業績のたまもので経営の安定は揺るぎないサイゼリヤです。
そのサイゼリヤでは新規出店する際に、ROIが20%を達成できるかどうかを重要な判断基準にしています。つまり、5年で開業費を回収することが鉄則です。
このROIの数値を達成するために、サイゼリヤは他にも指標となる数値を設定しています。
その一つが、1店舗当たりの売上高は1億円以上というものです。
そして営業利益率は10%以上、1店舗の開業費は5000万円です。
営業利益=売上高1億円×営業利益率10%=1000万円
ROI=営業利益1000万円÷開業費5000万円×100%=20%
5年で初期投資の開業費を回収する根拠となる数字が示されました。
さらにサイゼリヤでは、営業利益10%を実現するために、売上と経費の配分モデルを作っています。
売上高・・・・・・・・ 100% 原価・・・・・・・・・・40% 粗利益・・・・・・・・・60% 人件費・・・・・・25% 設備費・・・・・・20% その他・・・・・・ 5% 営業利益・・・・・・・・10% |
サイゼリヤの儲けの仕組みはこんなところにも確立されているのですね。
経験や勘や度胸で経営する時代はとっくに終わっています。
経営とは科学なのです。
しっかりとこの「ROI」を設備投資の際のベースに据えて、安定経営、儲かる美容室づくりのために、出店計画、開業計画を立ててみることを強くお勧めします。
●☆●☆――
ホームページ開設のお知らせと「会員募集」!
さて、Suzu Masaが主宰する「MASAサロン経営研究会」のホームページが出来上がりました。
一度覗いていてください。
まだまだ制作途上です。どんどんブラッシュアップしていきます。
さらにフレッシュな緊急企画としてオンラインの経営勉強会を立ち上げました。
名前は「未来創造」です。会員のみなさんとすばらしい未来を創造していきたいと思います。
鋭意会員募集中です!
「ごくわずかの例外を除き、原則と手順を理解していれば、問題は実務的に解決できる。」
(ドラッカー)
債務超過と事業承継
債務超過はどれくらいあるか?
債務超過に陥っている企業はどれくらいなのでしょうか。
中小企業庁が発表した「中小企業白書」(2019年)によると、全体の35%ということです。
問題は、2010年度のコロナ緊急融資によって債務超過はどのくらい増加したのかということです。8割経済、7割経済、つまりコロナ禍以前の売上に比べて7~8割の売上と言われるなかで、あくまでも私見に過ぎませんが、プラス10~15%だろうと推測します。(たぶん、甘い予測だと思われますが。)
ということは、コロナ以前の35%と合計して45~50%は債務超過ということです。
3社に1社は廃業の危機
ここに、経産省の衝撃的なレポートが加わります。
「衝撃の2025年」と題して
・中小企業の127万社(3社に1社)が廃業の危機
・650万人の雇用が失われる
・22兆円のGDPが失われる
というもので、原因の大半が「後継者がいない」。経営者のボリュームゾーンが65~69歳であり、後継者がいないのは、ストレートに企業の死活問題になります。
1.社長が60歳以上でかつ後継者不足で事業継続が困難が全体の33%
2.債務超過に陥っている企業は全体の、少なく見積もって40%
1、2ともに該当する企業は33%×40%で13%となります。つまり中小企業380万社のうち50万社が後継者不在かつ債務超過企業ということです。
美容業界も例外ではない
これはそっくりそのまま美容業界にも当てはまります。
少し前の2018年度のデータですが(厚生科学審議会生活衛生適正分科会)、以下のような内容が発表されています。
- 経営者の年齢構成・・・「60歳以上」が51.4%と過半数
- 事業継続の困難・・・・「後継者なし」78.2%
- 今後の経営方針・・・・「廃業」16.2%
「60歳以上」の経営者が過半数を占め、「後継者なし」が8割、今後の経営方針を「廃業」と決めている割合が16%ということです。
廃業の危機にあるのは、先に掲げた経産省のデータよりも16%と少ないものの、ここにどれだけの債務超過企業が含まれるのかはわかりません。だいたい大差はないと見てよさそうです。
いずれにしろ、廃業は間近な将来の方針であり、いずれ後継者問題が解消されなければ、現在営業している美容室の8割は、M&Aの対象にならない限り、後継者なしで廃業を選択せざるを得ません。少なくとも、M&Aの候補のテーブルに載ることができるのは、資産超過のところであり、債務超過では原則としてその対象外です。
幸い黒字決算であり、しかし後継者がいないというパターンでは、事業継続できるチャンスはあります。
事業承継の方法
後継者とのマッチング
M&Aでは承継されない、地域の小さな商売を繋ぐ「ニホン継業バンク」という、事業を継がせたい人・事業を継ぎたい人とをマッチングさせる専用サイトがあります。もちろんこちらも黒字であることが条件です。
このマッチングサイトの美容業界版があればいいと思いますね。
事業承継特別保証制度
そして、意外と知られていないのが「事業承継特別保証制度」です。
社長の家族や身内のなかに後継者の予定がなく、社員の中から後継者を選ぼうとしても、借入の際の個人保証は荷が重いものです。それを敬遠して、後継者たるに優秀な社員であっても事業承継をためらったりする場合があります。
そこで、事業を承継する人の個人保証を撤廃する制度が2020年の4月にスタートしました。それが「事業承継特別保証制度」というものです。
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/hosyoukaijo/index.htm
詳しくは、上記サイトを閲覧していただきたいのですが、この制度を利用する場合、財務基準があります。以下の条件を満たす必要があります。
①資産超過
②リスケをしていない
③法人と経営者の分離
④EBITDA有利子負債倍率が10倍以内
上記のうち④のEBITDA(エビットディーエー)とは、償却前営業利益のことで、
で10倍以内が条件だということです。
営業利益重視の決算
金融機関に対して、今までは経常利益が最強でした。だから、営業利益はそこそこにして雑収入、たとえば保険の解約金などを突っ込んで経常利益を膨らませようと手を尽くしました。金融機関に見栄えがいいといわれる決算書を作っていたのですね。
ところがここ数年、そんな財務上の操作から経常利益にはそれほど重きを置かずに、代わって営業利益、つまり本業での儲けを重視するようになったわけで、これは世界の趨勢ともなっているようです。
こういった動きはきわめて真っ当なことであり、今後は「営業利益をどうやったら大きく見せるか」に経営者は意識をシフトさせ、本業での儲けをどうやったら高められるかに注力することです。つまり、営業利益重視型に舵を取り、もちろん営業利益重視の決算書にすることがポイントとなります。(この辺は顧問税理士さんにぜひご確認ください)
多くの店舗が消滅する業界の近未来
後継者がいないことで廃業を選択するケースが今後は、まさに爆発的に増えてきます。
しかしながら、廃業を選択するということは、無借金経営のところか、借入金があったとしても返済できる場合に限られます。
借入金の返済ができない、その他の債務が不履行になるといった場合は、多くは破たんとなります。
廃業、破たんのいずれかを選択せざるを得ないとしても、結論は、多くの店舗の消滅がここ数年で起きるというのが美容業界の近未来です。
それだけ新陳代謝があっていいというのは、また別の話。
「自分は、会社という一つの社会の中で、社員家業をしている独立経営体であると考える。」
(松下幸之助)